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顎関節症の症状・原因 ・治療・予防対策のまとめ

公開日: : 最終更新日:2015/03/27 骨・関節の病気


顎関節症は「アゴが痛む」「アゴが鳴る」「口が開かなくなる」病気として知られていますが、実は全身に障害を及ぼすことがあります。
多くの人が一度はアゴに違和感を感じた経験があり、顎関節症も多くの人に見られる身近な病気ですが、よくあることだからといって放置していると日常生活に支障をきたしたり、精神疾患を引き起こすこともあるのです。
誰もが発症する可能性のある顎関節症の原因や症状、治療法、予防法などを知り、早めの対策を行うことが大切です。

顎関節症とは

顎関節症(がくかんせつしょう)とは、顎(あご)の関節やその周辺組織に痛みや機能障害が起こる慢性的な疾患のこと。
口を開閉したり食べ物を噛む際、顎関節に痛みや関節音を伴う症状や、アゴを動かす筋肉に痛みや違和感を伴う症状などを総称して顎関節症と言います。
顎関節は両耳のすぐ前あたりに一つずつあり、下アゴの骨の先端(下顎頭)が側頭部の骨のくぼみにはまり込んだ部分に位置します。
側頭骨のくぼみ部分は下顎窩と関節隆起からなり、下顎窩と下顎頭の間にはクッションの役割を担う関節円板があります。
これらの周辺にはアゴを動かす様々な筋肉があり、口を開けるときには開口筋と呼ばれる前頸筋、食べ物を噛むときには閉口筋または咀嚼筋と呼ばれる咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋、力を入れて噛むときには頸筋と呼ばれる前頸筋と後頸筋が使われます。
顎関節症の症状の程度は、ごく軽いものから重度のものまで様々で、すぐに治まる場合もあれば、手術が必要になるほど日常生活に大きな支障をきたす場合もあります。
発症頻度は、すべての歯科受診患者の約10%とされており、子供から高齢者まで幅広い年齢層に見られますが、比較的若い人が発症しやすく、男性よりも女性が多い傾向にあります。
特に近年では20~30代の女性を中心とした若年層の患者数が増加しています。
顎関節症は気づかないうちに発症していることが多く、進行するにつれて治療が困難になるため、早期発見が重要です。
食事のときやアクビをしたときなどに少しでもアゴの辺りに違和感があれば早めに病院で診てもらうことをおすすめします。

顎関節症の症状

顎関節症は主に3つの症状が顎関節やその周辺に単独もしくは複数が重なって現れることが多いのですが、他にも様々な症状があり、アゴ周りだけでなく全身に現れることもあります。
また、放っておいても自然に治まる軽い症状であれば日常生活に支障をきたすことはほとんどなく、治療が必要ないこともありますが、重い症状が全身に及んだ場合は精神面にも悪影響を及ぼす可能性があります。

主要3症状

顎関節や咀嚼筋の疼痛

口を開閉したり食べ物を噛むときに感じる顎の関節や筋肉の痛みは顎関節症の特徴であり、代表的な症状の一つです。
アゴを動かしていないときに痛みを感じる場合は他の病気が考えられます。

顎運動障害(開口障害)

口が大きく開かなくなる症状です。
痛みを回避するために無意識に動きを抑えている場合と、開けたくても開けられない場合があります。
通常は指3本分が縦に入る大きさ(4~5cm)まで口を開くことができますが、指2本分(3cm)以下であれば顎関節症が疑われます。

関節雑音

アゴを動かしたときに「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」「ゴリゴリ」といった雑音が耳に鳴り響きます。

その他のアゴ周りの症状

アゴのシコリや炎症、噛みあわせのズレや変化、アゴや顔全体のゆがみなどがあります。

全身症状

首・肩・背中のコリや痛み、頭痛、腰痛、耳の痛み、歯や舌の痛み、全身に及ぶ痛み、四肢のしびれ、めまい、耳鳴り、耳閉感、難聴、眼精疲労、充血、流涙、口内の乾き、味覚の異常、喉の違和感などがあります。
その他、不眠症や睡眠障害、うつ病、自律神経失調症を引き起こすこともあります。

顎関節症になる原因

顎関節症の原因となる因子は、発症しやすくさせる素因、発症のきっかけとなる発症因子、症状を長引かせる持続因子の3つに大きく分けられます。
それぞれに様々な要因があり、その一つが原因ではなく複数が積み重なって顎関節症を発症するケースが多いようです。
上記3つの因子をさらに分類すると、以下の事柄が挙げられます。

アゴに悪い癖や習慣

姿勢が悪い、頬杖をつく、歯ぎしり、歯を食いしばる、片方のアゴで食べ物を噛むといった癖や習慣はアゴの関節や筋肉に負担をかけます。
中でもブラキシズムと呼ばれる歯ぎしりや食いしばりなどの行為はアゴへの負担が非常に大きく、顎関節症の直接的な原因になると考えられています。
これらは顎関節症を発症させる上に治療後の再発リスクも高めてしまうので特に注意が必要です。

噛み合わせ

不良な歯列矯正や歯科治療、生まれつきの歯の変形、

ストレス

顎関節症の患者は大きな精神的ストレスを抱えていることが多く、最大要因とされるブラキシズムも元々の原因は精神面にあると考えられています。

外傷

事故や転倒によってアゴに強い力が加わると関節円板のズレなどが生じ、顎関節症を引き起こすことがあります。

他の病気

関節の炎症や変形を引き起こす多発性関節炎やリウマチなどの病気は症状の一つとして顎関節症が現れることがあります。
また、顎関節症の全身症状として挙げられる不眠症やうつ病もそれが原因となって顎関節症を引き起こすことがあります。

顎関節症の種類

顎関節症は大きく分けて、咀嚼筋(閉口筋)の障害によって起こる「筋性」と、下顎頭・下顎窩・関節円板・関節包などの顎関節の障害によって起こる「関節性」があります。
そこからさらに、障害のある具体的な部位によって以下の5つに分類されます。

Ⅰ型

咀嚼筋障害を主徴候とした筋性のもの。
筋肉の緊張や炎症によって血液循環が悪くなり、咀嚼筋を中心にこめかみや頬の筋肉に強い痛みを生じるのが特徴です。
首や肩などの離れた部位にも痛みを感じたり、顎関節の運動痛や運動障害を起こすこともあります。

Ⅱ型

関節包、関節靭帯、円板後部組織の慢性外傷性病変を主徴候とした関節性のもの。
顎関節の関節包や靭帯などの線維組織に障害が起こる関節包炎や滑膜炎などによって顎関節の運動痛や圧痛、関節雑音を生じるのが特徴です。

Ⅲ型

関節円板障害を主徴候とした関節性のもの。
関節円板が本来の位置からズレてしまう関節円板転位や変性によってカクカクという関節雑音(クリック音)を生じるのが特徴です。
その中でも、関節円板が一時的に元の位置へ戻るときに関節雑音が起こる復位性関節円板転位は「Ⅲ型a」、関節円板の位置が元に戻らず開口障害や顎関節の疼痛が起こる非復位性関節円板転位は「Ⅲ型b」とされます。

Ⅳ型

変形性関節症(退行性病変)を主徴候とした関節性のもの。
関節軟骨の破壊、下顎頭や下顎窩の骨吸収や変性・添加、関節円板や滑膜の変形異常などによってミシミシという関節雑音(クレピタス音)を生じるのが特徴です。

Ⅴ型

Ⅰ~Ⅳ型のいずれにも該当しないもの。

顎関節症の治療

顎関節症の治療は原因を取り除くことを目的とした治療法が中心となり、それに併せて症状を緩和する治療などが行われます。

スプリント療法

スプリントとは、歯の上に被せる顎関節症治療用の薄いマウスピースのこと。
噛み合わせを調整してアゴの位置を安定させることで歯ぎしりや食いしばりといったブラキシズムの癖を解消し、アゴへの負担を軽減します。

物理療法

症状が比較的軽い場合、顎関節の周辺をホットパックで温めることで血行を促し、筋肉の緊張や痛みを緩和します。

薬物療法

痛みが強いときには鎮痛剤や抗炎症薬、筋肉の緊張や痛みがあるときには筋弛緩薬、ブラキシズムや精神的ストレスが原因の場合は抗不安剤や抗うつ剤を投与します。

運動療法

手で、もしくは補助器具を使って口を大きく開けることで口の開く範囲を広げ、アゴをスムーズに動かせるようにする顎関節可動化訓練を行います。

マニピュレーション法

顎関節を直接動かし、関節円板を正しい位置に戻す治療法。
薬物療法や運動療法を行っても口が開かない場合に行います。

外科的手術

上記のいずれの治療法でも改善が見られないときに行われる最終手段です。
滑膜炎などの炎症がある場合は、顎関節の中に老廃物として残る古い関節液を注射針で取り除き、生理食塩水を注入して関節内を洗浄する関節腔洗浄療法。
関節円板と骨の癒着がある場合は、切開した皮膚の上から顎関節用の内視鏡を挿入し、それらを剥がす関節鏡手術。
アゴの位置が正常で、不良な歯列矯正や歯科治療、虫歯などによる噛み合わせの悪さが原因の場合は、歯を削ったり高くする手術を行います。

顎関節症の予防と対策

顎関節症において、治療が原因を取り除くことを目的とするのと同様に予防も原因を取り除くこと、また、それ以前に原因を作らないことが大切です。
顎関節症の原因の多くは日々の生活の中に潜んでおり、これまでの習慣を改善しなければ、治療を行ってもまた再発してしまいます。
実際に顎関節症の患者は発症と回復を何度も繰り返す傾向にあるため治療後も自宅でのセルフケアが重要になります。

アゴに悪い癖や習慣

発症と再発ともに最も可能性が高いため、特に注意が必要となります。
姿勢の悪さや頬杖をつく癖、片方のアゴだけで食べ物を噛む癖は常に意識することを習慣づけ、ついやってしまったときはすぐに止めましょう。
就寝中の歯ぎしりはマウスピースなどで防ぐことができ、体のゆがみによって起こる場合は整体を受けるのも有効です。
歯の食いしばりは、たまに口を無理のない程度に大きく開けて常にアゴに力が入り過ぎないように意識しましょう。

ストレス

ストレスの内容は人によって様々で、それを解消するのはなかなか難しいですが、一番良いのは自分に合ったストレス解消法を見つけること。
緊張をほぐして筋肉を休ませるリラクゼーションやマッサージ、体に無理なく行える有酸素運動はストレス解消に加えて全身の血行促進にもつながります。
また、顎関節症のことをあまり考えないこと、症状を気にしすぎないことも大切です。

外傷

突然の事故や転倒は防ぎようがありませんが、アゴをぶつけたら動かさず、すぐに患部を冷やすようにしましょう。

噛み合わせ・他の病気

病院で早めに治療を行うことが大切です。

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