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Q熱の原因・症状・感染経路・治療・予防・検査など

公開日: : 最終更新日:2015/11/01 皮膚


Q熱はコクシエラ バーネッティ(Coxiella burnetii)の感染によって起こる人間と動物に共通する感染症です。
以前は日本国内ではQ熱は存在しないと言われていましたが、近年の研究によってさまざまな病気と関係していると考えられるようになってきました。
そして、その後の研究で人間にも動物にも感染していたことがわかったのです。
ここではQ熱の特徴や治療方法について、紹介していきます。

Q熱の症状

原因菌に感染したとしても必ずしもなんらかの症状があらわれるということはなく、約半数は無症状です。
2~4週間の潜伏期間を経て、頭痛や高熱、筋肉痛、全身の倦怠感、咽頭痛といったインフルエンザにきわめて近い症状があらわれます。
急性のQ熱の場合、不明熱や肝炎などさまざまな症状があらわれますが、ほとんどは肺炎や気管支炎、上気道炎など呼吸器系の症状です。
病気の経過は比較的良好ですが、髄膜炎や脳炎などの合併症のリスクは存在します。
急性Q熱を発症したなかの一定割合の人は、心内膜炎など治療がむずかしい慢性Q熱に移行します。
急性Q熱の場合、死亡率は数パーセントほどで、回復すれば一生涯つづく免疫性をえることができます。
慢性Q熱では6ヶ月以上にわたって感染が継続するため、急性Q熱と比較すると症状が重篤化しやすいとされています。
病気の経過もよいとは言えず、治療は簡単ではありません。
慢性Q熱に移行しやすいのは、がんや慢性腎臓病を抱えている人、臓器移植を受けている人、心臓弁膜症の人などです。
ある研究によると慢性期に移行すると、慢性疲労症候群様の症状が見られることがわかっています。
これは睡眠障害やアルコール不耐症、寝汗、筋肉痛、関節痛、頭痛、微熱、慢性疲労に加えて、集中力や精神力の欠如、理性のない怒りなどの精神的症状が見られる病気です。
この状態が数ヶ月から数年間つづきますが、リンパ節腫脹や炎症所見が確認されないため、感染症と診断されずに原因不明とされるケースもあります。
抑うつ症状のような症例も多く挙がっていますが、Q熱との関係性は科学的に証明されているわけではありません。
しかし、Q熱が検査によって明らかになったあとに自殺した症例などもあるので、今後なんらかの証明がされる可能性はあります。
また、子供がQ熱となると引きこもりと誤認されることが多く、病気の発見が遅くなる場合があります。
たとえば、倦怠感が強く登校できないことを責められていたのに、医療機関で検査をしたらQ熱に感染していたことが判明し、治療をしたら倦怠感が改善されたという症例もあります。
微熱や倦怠感が長期間つづく人の一部が、Q熱の原因であるコクシエラ菌に感染しているということはあり得ると言えるでしょう。
Q熱は感染していることさえわかれば、治療で症状を改善することができるので、おかしいと思ったら医療機関で相談することが大切です。

Q熱の感染経路

Q熱の原因となるコクシエラ菌の感染経路は、家畜やペットです。
自然界に広く分布する野ウサギやシカ、クマなどの動物やダニがこの菌を保有しているため、こられも感染源となります。
コクシエラ菌は非常に強い性質をもち、乾燥した環境でも生存が可能です。
クコシエラ菌に感染した動物の尿や糞便、分泌した胎盤などにはたくさんの病原菌が含まれます。
それに触れる、あるいは吸い込むなどして人間に感染すると考えられます。
動物が感染しても症状があらわれないことは珍しくありませんが、妊娠中の羊や牛が感染すると流産や死産におちいることがあります。
コクシエラ菌は胎盤で大幅に増殖するという特徴をもつので、原因菌を多く含む家畜の胎盤や羊水が原因となって集団感染が起こる症例は数多くあります。
アメリカやカナダでは出産時の猫が感染源となって、人間が感染した症例も報告されています。
動物から人間へと感染しやすい菌ですが、人間同士の感染はあまり起こりません。
しかし性交渉によって感染が確認された症例もあるため、その可能性はゼロというわけではありません。
牛や羊の乳を原材料とする殺菌していない乳製品のコクシエラ菌感染の可能性が指摘されてきたため、日本国内では飲用乳の基準が改正されて63℃で30分、もしくはそれと同じくらいの殺菌効果をもつ方法で加熱殺菌することが義務づけられるようになりました。
こういった条件下であればコクシエラ菌は死滅するので、日本の基準にそってつくられた牛乳は安全性上での問題はないと言えます。
鶏卵や鶏卵関係の食品もコクシエラ菌への感染の可能性が指摘されたため、国が調査をしましたが、市場に出ている鶏卵の卵黄からは菌の検出はされませんでした。
一方、ペットからの感染に関しては、家畜との接触機会がない人にも感染が確認されたために当初疑われていました。
そして、日本国内で犬や猫が感染しているか調査したところ、10~15%ほどが過去に感染していたということがわかったため、現在は感染源のひとつと考えられています。
人間だけでなく、ペットがかかるQ熱の治療薬などもあるので、心配な場合は動物病院などで調べてみるといいでしょう。

Q熱の治療

Q熱は自然治癒することも多いため、必ずしも治療が必要になるということはありません。
治療をするかどうか、どういった治療方法を選ぶかは医師が検査結果などを踏まえたうえで決定します。
急性Q熱の治療では、テトラサイクリン系抗菌薬が用いられることが多いですが、場合によってはニューキノロン系をつかいます。
ほとんどの人がこの措置を行うことで数日で熱が下がりますが、症状が長くつづく場合はリファンピシンが併用されるケースもあります。
β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシドなどの薬剤は効果が期待できないため、通常は使用されません。
Q熱の再発や慢性化を防ぐために、症状がなくなったあとも3~4週間は薬剤投与を継続することが推奨されています。
海外では人間用と動物用ワクチンが開発され、動物と接する仕事に従事している人など感染の危険性が高い人への接種がすすめられています。
しかし、安全性に問題がなく十分な効果が得られるワクチンの完成にはまだしばらくかかると言われています。

Q熱の予防

原因菌の流行が予想される地域に行く場合は、動物に直接触れるのは避け、飼育しているエリアにも極力近づかないようにすることが大切です。
特に免疫機能が低下している人は感染のリスクが通常よりも高い状態なので、十分に気をつける必要があります。
もしも動物に触れてしまった場合は、手洗いや消毒を忘れずに行うようにしましょう。
ペットを介して感染する可能性もあるため、ペットに触ったあとも手洗いや消毒は必要です。
過剰な接触によって感染リスクが高まるので、口移しでの餌やりなどは控えましょう。
多くの野生動物やマダニが保菌しているため、犬などのペットを山野などに連れて行く場合は、マダニ予防の処置を行うことも重要です。
動物の出産時期は特に感染リスクが高まるので、その時期の山歩きなどは避けたほうがいいでしょう。
また、普段から飼育環境を清潔に維持するようにし、犬を散歩させるときは糞はきちんと持ち帰って、適切に処理します。
飼育環境を清潔に保つことは、感染原因であるマダニの繁殖を防ぐことにつながります。
最近はペットでも安全な殺菌スプレーなどもあるので、そういったものを使用するのもおすすめです。
飼っている犬や猫が流産や死産におちいった場合は、感染の可能性があるので動物病院で診てもらうようにしましょう。
死産した場合は胎児は焼却処分し、消毒液をつかって消毒する必要があります。
また、犬や猫をペットとして飼う前に、検査を行って感染の有無を確かめることも大切です。

Q熱の検査

原因がはっきりしない発熱や肝炎、肺炎などが確認された場合、Q熱を発症している可能性があります。
診断を確かなものにするには、病原体の分離と検出、あるいは血清学的診断などが必要となります。
通常の急性Q熱では、IgM抗体の上昇とIgG抗体の上昇が確認されますが、慢性Q熱では抗体反応がはっきりしないケースもあります。
日本国内ではIFAの陽性抗体価が抗体価が4倍以上上昇することが基準とされており、それは集団感染を基準としたQ熱先進国の多くと同じものです。
これらの検査は特殊なもので、どこの医療機関でも検査が受けられるというわけではありません。
一般的な検査では感染が確認できないため、Q熱診断のための検査を受けなくてはいけないのです。
それがQ熱の診断・治療に困難さをもたらす一因となっており、調べていないだけで多くの患者が存在する可能性も示唆しています。
現在のところ、Q熱の検査や治療が可能な医療機関は日本国内ではごくわずかで、住んでいる場所によって体調不良のまま長距離を移動しなくてはならず、困難さがつきまといます。
Q熱自体も症例としてはそれほど多くないため、医師の選択肢としても希薄と言えます。
そのため、急性期には特に確かな診断ができずに、不明熱として処理されることも少なくありません。
慢性期にいたると感染や発症から時間が経過しているため、患者自身も感染のきっかけとなった動物との接触を原因とは考えにくいと言えます。
原因がはっきりしない全身倦怠感を抱え、いくつも病院をまわっても明確な答えが出ず、検査可能な病院で調べたらQ熱だったという症例もあります。
正しい診断・治療を受けるためには、患者自身がQ熱に対する正確な知識や情報をもち、原因と考えられることをよく整理しておく必要があります。
また、Q熱は法律によって指定された伝染病で届け出が義務づけられていますが、診断のための検査は保険適応しておらず、実費となっています。
検査の困難さだけでなく、そういった金銭的な負担もあることから、まだまだQ熱に関しては課題が多いと言えるでしょう。

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