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肺結核の原因・症状・治療

公開日: : 最終更新日:2017/05/31 肺・気管支の病気

肺結核

結核(肺結核)とは

細菌の一種である結核菌(けっかくきん)が原因で引き起こされる感染症のことを結核(けっかく)といい、この菌が肺で増殖することによって引き起こされた場合には肺結核(はいけっかく)とよばれます。

結核菌は肺のほか、にはリンパ節、腸、骨などに感染することもありますが、一番多く起こっているのは肺の感染です。
結核菌は抗酸菌(こうさんきん)の一種であり、結核菌のほかには非定型(ひていけい)抗酸菌があります。

抗酸菌は胃の内部で死ぬことがなく、非定型抗酸菌に関しては、感染している人からほかの人へと感染が拡大します。
また、抗酸菌は一般細菌と比較して非常に発育が遅く、培養には時間を要します。

肺結核は空気中に存在する結核菌を吸い込み、肺で菌が増殖することによって炎症が生じます。

結核菌は体内に潜んでいる期間が長く、徐々に進行するため、はじめは自覚症状がありませんが、やがて倦怠感(けんたいかん)、食欲低下、ひどい寝汗、咳(せき)、痰(たん)、血痰(けったん)といった症状が引き起こされます。

結核菌に侵されているところの影がレントゲンで描出されるようになるまでは、6ヶ月以上の期間を要します。

結核は昔、日本人が命を落としてしまう原因のトップで、国民病といわれている頃がありましたが、現在では罹患者は減少しており、死亡原因の順位も大きく下がっています。

ただ、いまでも日本では年間で約20,000人以上が新たに結核にかかっており、2,000人程度の人が命を落としてしまっており、人から人に感染する伝染病で、健康に生活を送ってきた人に引き起こされることもあるため、軽視することはできません。

結核(肺結核)の原因

結核(肺結核)の病原体

結核を引き起こす原因になるのは、細菌の一種である結核菌です。
結核菌は抗酸菌に分類されている細菌であり、抗酸菌というのは酸に強い菌のことをいいます。
このような性質を有しているために、胃のなかで死滅することがありません。

抗酸菌には結核菌のほかに非定型抗酸菌がありますが、非定型抗酸菌とは異なり、人から人へと感染します。
また、非常にゆっくりと発育し、培養に長い時間を要することも特徴のひとつです。

結核(肺結核)の感染経路

肺結核にかかっている人が咳やくしゃみをすることによって結核菌が排出されます。
そして、その結核菌が空気中を漂い、ほかの人が息をすることで結核菌を吸い込み、肺に達することによって感染します。

このような感染経路のことは飛沫感染(ひまつかんせん)といいます。
なお、感染した人が絶対に発症するわけではありません。
結核菌に感染してしまった人のうち、肺結核を発症するのは10~20%程度です。

感染後にそのまま発症しないのは、体に備わっている免疫機能が、病原体を封じ込めてくれるためです。
ただ、いったん免疫が結核菌を封じ込んだとしても、結核菌が死滅したわけではありません。

体内に潜んでいることが多く、体の免疫力が落ちると活動を再開し、肺結核を発症してしまうことがあります。
このような形での肺結核の発症のことを、既感染発病(きかんせんはつびょう)といいます。

また、結核菌が肺に入ってきたときに、結核菌のほうが体の免疫力より強いことがあり、この場合には結核菌を封じ込むことができません。
この場合の発症のことは初感染発病(しょかんせんはつびょう)といいます。

結核(肺結核)にかかるリスクが高い人

この病気にかかっている人とよく接触することになる、医療現場で活躍している人たちはリスクが高いです。

また、免疫力が落ちている人もハイリスクで、このような人のなかにはステロイド治療や抗がん剤治療を長く受けている人、コントロール不良の糖尿病(とうにょうびょう)や透析治療を受けている人、ヒト免疫不全ウイルス感染などが含まれます。

高齢の人も危険で、若い頃に感染していて、結核菌が免疫力低下をきっかけに活発化してしまう恐れがあるというのが理由です。

また、子どものうちとくに乳幼児は免疫力が心許なく、結核菌に感染すると発症する確率が高く、重症化しやすいため注意しなければいけません。
なお、このような理由があるために、子どもは生後6ヶ月までに予防接種(BCG)を受けることになっています。

結核(肺結核)の症状

結核(肺結核)でははじめにどういう症状が出現するのか?

肺結核は空気中を漂っている結核菌を吸い込み、肺に達した結核菌が増殖して炎症が生じる感染症です。
この病気は潜伏期間が長く、じわじわと悪化していくため、初期段階では自覚症状がありません。

やがて起こり得る症状

無症状の時期を経て、咳、痰、発熱、食欲低下、ひどい寝汗、倦怠感、疲れやすいといった症状が引き起こされます。
咳や痰の症状が出現している状態では、ほかの人に感染させてしまうリスクが高まります。

また、症状が風邪と似ているために肺結核をほうっておいてしまい、重症化してようやく医療機関へ行く人も少なくありません。
咳や痰、発熱の症状が2週間以上にわたって持続するようであれば、病院で受診しましょう。

なお、肺結核を放置していると、痰に血液が混じる血痰の症状や、呼吸器系の器官での出血により口から血を吐く症状のことをさす喀血(かっけつ)、胸の痛み、息苦しさ、体重低下といった症状が追加されることがあります。

結核(肺結核)の検査・診断

結核(肺結核)で受診するのに適した診療科

この病気にかかった場合の症状には、咳、痰、微熱など、風邪と間違ってしまうようなものが含まれています。
ただの風邪であれば症状が長引くことは普通ありませんが、肺結核を起こしている場合には長引くのが特徴です。

咳や痰、微熱の症状が2週間以上にわたって持続するような場合には、病院で検査を受けましょう。
なお、病院へ行くといっても、何科に行けばいいのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか?

この点に関してですが、成人は内科または呼吸器科へ、子どもは小児科へ行けば対応してくれます。
医療機関へ行くと、主に以下のような方法でこの病気を起こしているかどうかが診断されることになります。

X線・CT検査

病巣(びょうそう)といって、菌に侵されている場所の存在を調べることを目的に画像検査が行なわれています。
X線検査はレントゲン検査の別名であり、肺の状態を平面に撮影することが可能です。

肺炎など似たような異常を示す病気や、結核が治った痕のこともあるため、X線だけで肺結核と見極めるのは困難な場合があります。

このX線検査のほかにはCT検査が行なわれており、この検査ではさまざまな方向からX線の照射を行なうことによって、肺の断面図を撮影することが可能であり、より詳細で正確な情報を得ることができます。

ツベルクリン反応検査・インターフェロンγ(ガンマ)遊離試験

結核菌感染の判定を行なうことを目的に行なわれている検査です。
ツベルクリン反応検査は結核菌が産生するタンパク質を皮膚に注入し、48時間後の皮膚反応を確認します。
注射したところの赤みが大きく、かたくなることにより、感染していると判定されます。

ただ、ツベルクリン反応検査では、BCG接種の経験がある人では感染の有無と無関係に陽性を示してしまうため、診断は血液検査のインターフェロンγ試験で行ないます。
インターフェロンγ試験では採取した血液に結核菌に固有の抗原を働かせて、その反応を確認します。

ツベルクリン反応検査ではBCG接種を受けていると感染の有無と無関係に陽性になり、区別できなくなる問題がありますが、インターフェロンγ試験ではこのような問題がなく、正確に診断をすることが可能です。
また、発症前の感染段階で診断を行なうこともできます。

結核菌検査

結核菌の検出を目的に行なわれているのが、結核菌検査です。
結核菌検査は塗抹(とまつ)検査、培養検査、遺伝子検査に大別されます。

塗抹検査はスライドガラスに痰を塗布し、結核菌のみを染め出して、顕微鏡で観察することにより結核菌の有無を確認する方法です。
塗抹検査によって陽性を示した場合には、その人は感染源になる可能性があることを意味しています。

培養検査は培地で結核菌のみを培養することにより、増殖した菌を目視によって観察して菌の検出を行ないます。
塗抹検査と比較して10倍以上精密ではあるものの、最終的な結果が出るまでには8週間を要します。

ただ、いまは8週間もかけることなく結果が出る液体培地を使った検査もあります。
最後に遺伝子検査ですが、痰を前処理して結核菌の遺伝子をとり出し、それを増幅させて結核菌の存在を確認する方法です。

培養検査と同程度の正確さがあり、培養検査より短い時間で結果がわかること、さらに抗酸菌の種類まで把握することが可能です。
わずかな量の菌でも遺伝子レベルで検出することが可能なPCR法により、1日で診断を行なうこともできます。

結核(肺結核)の治療

主な治療法

この病気にかかった場合の治療の中心は抗結核薬による薬物療法です。
リファンピシン、イソニアジド(ヒドラジド)、ストレプトマイシン、エタンブトール、ピラジナミドが、現在使用されている代表的な薬です。

リファンピシン、イソニアジド(ヒドラジド)、エタンブトール、ピラジナミドの4種類またはリファンピシン、イソニアジド(ヒドラジド)、ストレプトマイシン、ピラジナミドの4種類の薬を2ヶ月間にわたって内服し、そのあとリファンピシン、イソニアジド(ヒドラジド)の内服を4ヶ月間にわたって続けるというのが、典型的な薬物療法です。

従来は結核治療に2~3年間以上を要するのが当たり前でしたが、いまは上記のように半年で終えることが可能になっており、このような治療方法のことを短期化学療法といいます。

入院の必要はあるのか?

排菌していれば入院の対象になります。
入院の目的は、まわりへの感染拡大を阻止することと、確実に治療を行なうことです。
排菌は結核菌検査のうち塗抹検査で菌の存在が確認された場合であり、遺伝子検査によって病気を判定した場合には排菌には該当せず、入院することなく治療を受けることができます。
なお、薬物療法が効果を発揮すれば2~3ヵ月後には菌の活動は止まり、そうなれば退院して通院治療に切り替えることが可能です。

手術を受けることはあるのか?

いまではまず実施されることはなくなっています。
ただ、薬物療法を続けていても、菌を撲滅できない人に対しては、外科的治療が検討されることがあります。

治療中に注意すること

症状が改善したからといって、自分だけの勝手な判断で治療薬の使用をやめてしまってはいけません。
菌が変異を起こし、多剤耐性結核菌(たざいたいせいけっかくきん)といって、薬が効果を発揮しなくなる菌になってしまう原因になりかねません。
また、症状が改善しても、結核菌が撲滅できたとは限りません。

生存している菌が潜んでいることがあるため、医師の指示にしたがい、最後までしっかりと服薬を継続しましょう。
そのほか、この病気は人から人へと感染がひろがってしまいます。

咳の症状が起こっているときには、マスクの装着は必須です。
また、病気の治療中に夜勤などをしていいかどうかは、医師の判断をあおぎましょう。

そしてこれは治療後のことになりますが、この病気は再発を招いてしまうリスクがあります。
そのため、治療後の2年間は再びこの病気が引き起こされていないか検査を受けることになります。

結核(肺結核)の予防

結核予防ワクチン(BCG)の接種

国内では、生後6ヶ月までの子どもに対し、結核予防ワクチンとしてBCG接種が実施されています。
ただ、効果は生涯にわたって続くわけではありません。
接種後、15年程度が経過することによって、ワクチンの効果は失われていってしまいます。

免疫力を高める

この病気は免疫力が落ちてしまうことによってかかりやすくなります。
そのため、免疫力を高めるために、十分な睡眠をとる、過労を避ける、栄養バランスのとれた食事を摂取する、適度な運動を習慣化する、規則正しい生活を送るといった生活習慣の見直しを行ないましょう。

また、免疫力を高めることによって、感染したとしても発症しにくくなるという効果を期待することもできます。

健康診断を受ける

この病気を発症しないためには、健康診断を受けることも重要です。
職場の健康診断を年に一度、職場でなければ学校や地域などで実施されている健康診断を受けましょう。

身近な人が罹患した場合の対処

家庭内や職場で一緒に仕事をしている人など、結核菌に感染している疑いのある人に対し、接触者検診が保健所によって実施されています。
従来はツベルクリン反応によって調べていましたが、いまは血液検査によって早期に判定することが可能になっています。

検診で陽性を示した人に対しては、潜在性結核感染(せんざいせいけっかくかんせん)として、抗結核薬の一種であるイソニアジドの服用を6ヶ月にわたって行ない、予防する方法が選択されることになります。

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