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マイコプラズマ肺炎の原因・症状・治療

公開日: : 最終更新日:2017/05/31 肺・気管支の病気, 肺炎

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマ肺炎(まいこぷらずまはいえん)とは、マイコプラズマという病原微生物に感染~発症する肺炎の一種です。

マイコプラズマ肺炎は医療機関の外で日常生活を送っている人に起こる市中肺炎(しちゅうはいえん)の原因のなかでは、肺炎球菌に続いて高い割合を示しています。

また、マイコプラズマ肺炎は過去に4年サイクルでオリンピックイヤーに大流行を起こしてきたため、オリンピック病という呼称が使用されることもありました。

ただ、1984年と1988年に大流行を起こしたことを最後に、日本国中でマイコプラズマ肺炎が大発生するという現象は起こっていません。

いまでは不規則に流行することが多くなっており、2000年以降に関していうとマイコプラズマ肺炎の発生数は、年々増加傾向にあります。
マイコプラズマに感染して発症する肺炎の症状は比較的軽いケースが多く、年齢では10~30歳代の若い人に起こりやすいのが特徴です。

なお、1歳までの40%、5歳までの60%以上、成人の90%以上が感染を経験していますが、マイコプラズマ肺炎は不顕性感染といって、感染成立となっても発症しないか軽い風邪のような症状で終わることが多いです。

ただし注意したいこととして、一度感染すれば免疫によって二度と感染しないというわけではありません。
一生涯にわたって免疫が有効なわけではなく、何年か後にまた感染してマイコプラズマ肺炎を起こすリスクがあります。

マイコプラズマ肺炎の原因

病原体

マイコプラズマ肺炎を起こす病原体は、病気の名称にも入っているマイコプラズマです。
マイコプラズマは細胞壁がなく、一定の形をしていませんが、培養での形状は球形であることが多く、ほかにも細長い糸状や細長い糸が枝のように連なって真菌に似た見た目をしていることもあります。

自己増殖可能な微生物としては一番小さく、細菌とウイルスの中間に位置する微生物とされていたり、ウイルス寄りの細菌と位置付けられていることもあります。

熱への耐性にとぼしく、界面活性剤によっても無力化することが可能ですが、細胞壁の合成をさまたげることによって効果を発揮する種類の抗生物質は効果がありません。

感染経路

マイコプラズマ肺炎の感染経路は接触感染と飛沫感染の2種類です。
まず接触感染ですが、この感染ルートはマイコプラズマの感染者との濃厚な接触や病原体が付着したものを介しての間接的な接触で体のなかに病原体が入り込むことによって感染します。

一方の飛沫感染は、マイコプラズマの感染者による咳、くしゃみによって病原体が飛散し、その病原体を吸い込むことによって感染します。
なお、空気中の病原体を吸い込むことによって感染する空気感染(飛沫核感染)は、マイコプラズマ肺炎の感染ルートには含まれません。

マイコプラズマ肺炎の症状

潜伏期間

マイコプラズマの潜伏期間は通常2~3週間ですが、感染して1ヶ月が過ぎたころに発症することもまれにあります。
潜伏期間中に咳(せき)、くしゃみ、鼻汁などの気道粘液中にマイコプラズマが排出されるようになります。

症状が出てくる2~8日前に排出がはじまり、症状が出現したタイミングで最多となり、量が多いまま約7日間が経過したあと、28~42日間以上にわたり排出され続けます。

これは長期間にわたり感染力が保たれていることを意味し、人から人へと感染が拡大していく恐れがあります。
学校、会社、地域レベルで流行することが多いのはこのためです。

発熱

マイコプラズマ肺炎の主な症状の一つには、発熱があります。
38℃以上、39℃以上の高熱が出る場合が多いです。
ただ、微熱で症状が出はじめることもまれにありますし、熱がないケースもあります。

マイコプラズマ肺炎の代表的な症状としては、激しく頑固な咳をあげることもできます。
発熱の症状が引き起こされて2日間が経過したあたりから、痰(たん)が絡まない乾いた咳が出るようになります。

時間が経つと乾いた咳の症状は強くなり、何日かするとしだいに激しく痰が絡むようになります。
痰は粘りがあったり膿が混ざっているようであったりするほか、血が混ざっている痰が出ることもまれにあります。

なお、ノドの痛み、鼻水の症状はさほど強くなく、これらの症状は20~30%ほどの人にしか起こりません。
咳の症状は発熱の症状が落ち着いたあとも数週間持続することが多いです。

頑固な咳だけの軽症のケースが大多数を占めていますが、発熱や息切れが付随して入院しなければいけないほど重症化するケースもあります。

倦怠感(けんたいかん)

マイコプラズマ肺炎を引き起こすと、全身倦怠感の症状が引き起こされます。
全身倦怠感の症状は、発熱の症状とほぼ一緒に出ます。

消化器症状

マイコプラズマ肺炎を発症すると、消化器症状が出現することがあります。
吐き気、嘔吐(おうと)、下痢(げり)の症状が、25%の人に起こります。

頭痛

マイコプラズマ肺炎では、風邪に似た症状がよく起こります。
頭痛の症状もそのうちの一つであり、炎症反応や血管拡張により、発熱と一緒に頭が痛くなることがあります。

胸痛(きょうつう)

マイコプラズマ肺炎になった人の約25%に引き起こされる症状です。
肺自体に痛みを感じる神経は存在せず、肺炎による痛みが出現することはありませんが、神経のある胸膜にまで炎症が引き起こされると痛みを感じるようになります。

嗄声(させい)

マイコプラズマ肺炎を引き起こした人の約25%に出現する症状です。
嗄声というのは声枯れや声のかすれのことを意味する症状のことをいいます。

耳痛(じつう)

文字どおり耳の痛みのことで、外耳や中耳およびこれらの周辺部に引き起こされます。
マイコプラズマ肺炎にかかった人の約25%に認められる症状です。

皮疹(ひしん)

肌にブツブツが出る症状のことを皮疹といいます。
この症状はマイコプラズマ肺炎になった人の6~17%に出現します。

筋肉痛・関節痛

マイコプラズマ肺炎を発症する人のなかには、筋肉や関節の痛みを訴える人もいます。

胸水貯留(きょうすいちょりゅう)

重症肺炎になった場合に起こり得る症状で、胸に水がたまった状態になります。

マイコプラズマ肺炎の合併症

マイコプラズマによる肺炎ではない、通常の気管支炎(きかんしえん)・肺炎、気管支喘息(きかんしぜんそく)、蓄膿症(ちくのうしょう)、中耳炎(ちゅうじえん)、無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)、脳炎(のうえん)、肝炎(かんえん)、膵炎(すいえん)、心筋炎(しんきんえん)、心嚢炎(しんのうえん)、関節炎(かんせつえん)、スティーブンス・ジョンソン症候群(しょうこうぐん)、ギラン・バレー症候群といった、さまざまな病気を併発してしまうリスクがあります。

マイコプラズマ肺炎の検査・診断

マイコプラズマIgM迅速抗体検査

マイコプラズマ肺炎の病原体に感染した場合、血中にIgG型とIgM型の特異抗体が産生されます。
マイコプラズマIgM迅速抗体検査はIgM抗体の有無を調べることにより、感染しているかどうか判断する方法です。

抗体が確認できた場合は陽性、確認できない場合は陰性といいます。
なお、この検査方法によって陽性を示すためには、発病後1週間は必要とされており、初診で検査を受けても陽性を示さないことが多いです。

また、成人ではIgM抗体の産生が少なく、感染成立にいたっていても陽性の結果を示さないこともあり、反対に子どもでは感染後の長いあいだ抗体が検出され続けてしまうことなど、問題点があります。

こうしたことからマイコプラズマIgM迅速抗体検査は精度の面に不安があり、早期に診断を確定することは困難であるといわれています。

マイコプラズマ抗原迅速検査

マイコプラズマIgM迅速抗体検査では、前述したような問題があるのに対し、抗原の迅速検査ではマイコプラズマ自体の検出を行なうことが可能です。

これによって陽性であるのに陽性を示さない、院生であるのに陰性を示さないということがなく、正確に診断を下すことが可能となっています。

ただし、咽頭分泌物を検査するため、正確に分泌物の採取を行なわなければ結果が陽性を示さなくなる可能性はあります。

DNA検査

マイコプラズマのDNAを検出する検査方法であり、わずかな菌でも検出できる点が強みです。
咽頭ぬぐい液、喀痰検体を使って調べます。

マイコプラズマは気管支や肺までたどり着いた時点で増殖を開始し、のどのあたりには気管支や肺と比べると病原体は少ないです。
ただし、膿性部分のある喀痰をうまくとり出すことができれば、マイコプラズマの検出率は上昇します。

マイコプラズマ肺炎の治療

抗生物質

マイコプラズマには細胞壁がなく、細胞壁の合成をさまたげるタイプの薬剤は向こうです。
そのため、タンパクの合成をさまたげるエリスロマイシン、クラリスロマイシンといったマクロライド系の抗生物質が優先的に使用されています。

ただ、いまはマクロライド系の薬剤に対する耐性を獲得しているマイコプラズマが増加しており、マクロライド系の薬剤が無効なケースでは、テトラサイクリン系やニューキノロン系の薬剤が選択される形になります。

なお、マクロライド系の抗生剤が効かないタイプのマイコプラズマが出てきたのは、マクロライド系の薬剤を使い過ぎたことが一因となっているのではないかという見方がされています。

対症療法

マイコプラズマ肺炎で起こる各症状に合った効果を発揮する薬剤が使用されています。

例として、激しい咳に対しては鎮咳(ちんがい)薬や去痰(きょたん)薬、発熱症状が出ている場合には解熱鎮痛(げねつちんつう)薬が使用されます。
また、発熱による脱水症に対しては水分補給を行ないますが、経口補給が無理な場合には点滴で水分を補う形になります。

そのほか、急性呼吸不全を付随している重症患者のほか、髄膜炎や脳炎が合併しているようなケースでは、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが選択されることがあります。
なお、副腎皮質ホルモンはステロイドともいいます。

マイコプラズマ肺炎の予防

ワクチンはある?

マイコプラズマ肺炎の予防に有効なワクチンは、現状において開発されていません。
別の方法でマイコプラズマ肺炎を防げるようにする必要があります。

どうやって予防する?

手洗い・うがいの徹底と、患者との濃厚な接触をしないこと、なるべく人ごみを避けて行動すること、ほかの人に向けて咳をしないこと、咳が出ている人はマスクを装着することが大切です。

また、タバコを吸っていない人と比較して、吸っている人のほうがマイコプラズマが原因の呼吸器感染症を引き起こしやすいため、喫煙習慣がある人はやめるに越したことはありません。

マイコプラズマ肺炎による出席停止

出席停止になることはある?

マイコプラズマ肺炎によって出席停止になることはあります。
感染拡大防止のため、校長が校医の意見を聞いたうえで出席停止措置がとられます。

いつまで出席停止になる?

○日というはっきりとした出席停止期間が設定されているわけではないです。
患者の症状により、校医やそのほかの医師が感染の恐れなしと判断するまでは出席することは認められません。
患者は医師の許可が出るまで家で安静にしている必要があります。

多くの場合、急激に症状が出る急性期に出席停止となり、全身状態が落ち着いてくると登校や登園をすることが可能になります。

欠席扱いになってしまう?

この出席停止措置に関することは、法律で決まっていることです。
マイコプラズマ肺炎で学校に行けなくなってしまった場合、欠席扱いになることはありません。

ほかの病気との違いは?

法律で定められている感染症は第一種、第二種、第三種があります。
第一種は治癒するまで出席することが認められないものであり、コレラやペストといった病気が分類されています。

第二種や病状によって伝染の恐れなしと医師が判断して登校が許可される感染症であり、インフルエンザやおたふく風邪などがこれにあたります。
マイコプラズマ肺炎のような措置がとられるのは第三種に分類されている感染症です。

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