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肺がんと原因・症状・検査・治療

公開日: : 最終更新日:2015/04/06 肺・気管支の病気

肺ガン
肺ガンは悪性度が高く、死亡者数が最も多いガンです。
しかし、肺ガンは進行すると治りにくい反面、早期に発見・治療すれば完治させることができます。
そのためには、肺ガンとはどういう病気なのか、どんな人が肺ガンにかかりやすいのか、どんな症状が出たら肺ガンを疑うべきなのか、
などを知っておく必要があります。
こちらでは、肺ガンの原因や症状から、検査や治療方法、予防法まで、肺ガン対策に必要な知識をご紹介していきます。

肺ガンとは

肺ガンとは、肺の粘膜を形成する上皮細胞に悪性の腫瘍(ガン)が発生する病気のこと。
肺は呼吸を司る臓器であり、口や鼻から吸い込んだ空気は気管と気管支を通って肺に送られます。
正確には、気管の上皮細胞にできた悪性腫瘍を「気管ガン」、気管支にできたものを「気管支ガン」、肺の中にある肺胞にできたものを「肺ガン」と言うのですが、一般的にはこれらを総称して肺ガンと呼んでいます。
肺ガンは世界的に最も致命的なガンと言われており、2005年の日本の統計によると男性の肺ガン死亡者数は全ガンの中で第1位、女性は第3位となっています。
他のガンと比べても死亡率が高い理由の一つは、発見の遅れ。
近年は肺ガンへの関心が高まり、検査を受ける人が増えたことで初期の肺ガン発見率も高くなってきてはいますが、定期的に検査を受けている人はまだまだ少ないのが現状です。
そのため、肺ガンが発覚したときにはすでに進行しており、有効な治療を行うことができず、手遅れとなってしまうケースが多いようです。
さらに、肺ガンは他の臓器に転移しやすく、そうなるとますます治療が困難になります。
肺ガンは早期に発見すれば完治は決して難しくないのですが、発見が遅れてしまうと治りにくくなるため、定期的な肺ガン検診が求められています。
肺ガン患者を見ると、女性よりも男性が多く、40代後半から増え始めて60~70代がピークとなっています。
女性の肺ガンは男性ほど多くはありませんが、2005年の統計で第3位となっているように女性の喫煙が増えたことなどが影響して肺ガン患者数も年々増加傾向にあります。

発生する場所

肺ガンは、肺の決まった箇所に発生するものではなく、発生場所によって症状なども多少異なります。
肺ガンが発生しやすい場所は、主に「肺門」と「肺野」です。
口や鼻から体内に取り込まれた酸素は、気管を通った後2つに枝分かれした太い気管支を経て、左右の肺の内側にあるさらに何本にも枝分かれした細い気管支を通り、肺の中へと送られていきます。
肺門は肺の入口にある太い気管支のことで、左右の肺の中央に位置します。
肺野は、細い気管支の出口で、肺胞がある肺の奥の部分です。
肺門に発生したガンを「肺門部ガン」、または「肺門型肺ガン」、肺野に発生したガンを「肺野部ガン」、または「肺野型肺ガン」と言います。
肺門部ガンは左右の肺の中心部分に発生することから「中心型肺ガン」、肺野部ガンは気管支の末梢部に発生することから「末梢型肺ガン」とも呼ばれています。
その他、肺の上皮細胞ではなく、肺に溜まった水(胸水)の中にガン細胞が混ざって肺ガンを発症する「胸水型肺ガン」もあります。
・肺門部ガン喫煙者に発症しやすく、せきや痰が出たり、呼吸が荒くなるなど風邪に似た症状が出るのが特徴です。
喀痰細胞診や気管支内視鏡検査を行えばすぐに分かりますが、X線写真には写りにくく、X線検査だけだと見つからないことがあります。
・肺野部ガン肺野部には感覚神経がないため、自覚症状はほとんどなく、発見時にはすでに進行しているケースが多々あります。
ただ、肺門部ガンとは反対にX線写真で見つけやすいガンなので定期的に検査を受けていれば早期発見は可能です。

分類

肺ガンは発生場所の他に、ガン細胞の形態にも違いがあり、大きく分けて「小細胞肺ガン」と「非小細胞肺ガン」の2つに分類されます。

小細胞肺ガン

いくつもの小さなガン細胞が密集して広がる、悪性度の高い肺ガン。
肺の入口付近(肺門)に発生しやすく、喫煙者に多く見られます。
他のガン細胞と比べて1つ1つは小さいのですが、小さいがゆえに他の臓器へ転移しやすく、増殖するのも速いのが特徴です。
また、化学療法や放射線治療が非常に有効で、治療しやすい反面、再発するケースが多々あります。

非小細胞肺ガン

非小細胞肺ガンは、さらに「腺ガン」「扁平上皮ガン」「大細胞ガン」の3種類に分けることができ、それぞれ異なる特徴があります。

腺ガン気管支や肺胞などを覆う細胞に似た性質を持つ肺ガン

肺ガンの中では発生頻度が最も高く、半分以上の肺ガンが該当します。
肺の奥の部分(肺野)に発生しやすく、初期症状はほとんどありません。
腺ガンにもいくつか種類があり、進行速度や有効な治療法はそれぞれ異なります。

扁平上皮ガン皮膚のように角質を作る性質を持った肺ガン

肺ガンの中で2番目に多く見られます。
肺野に発生することもありますが、ほとんどの場合が肺門です。

大細胞ガン名前の通り、大きなガン細胞によって発症する肺ガン

腺ガンや扁平上皮ガンの特徴が見られない場合は大細胞ガンと診断されます。
肺野に発生しやすく、初期症状はほとんどありません。
肺ガンの中では発生頻度が最も低いのですが、増殖スピードが速く、大きさは異なるものの、小細胞肺ガンと似た性質を持っています。

原因

肺ガンの原因といえば、真っ先に挙げられるのが「喫煙」です。
ただ、肺ガンはタバコ以外にも様々な原因が考えられており、その危険因子は身近なところに潜んでいます。
・タバコ肺ガンの最大要因であり、喫煙者は非喫煙者に比べて肺ガンになるリスクが5倍以上も高いと言われています。
喫煙者の中でも喫煙期間が長かったり、一日の本数が多い人、いわゆるヘビースモーカーであるほど肺ガン発症率は高まります。
たくさんの有害物質を含むタバコには発ガン物質も多く含まれており、その煙を肺の奥まで吸い込むわけですから、肺ガンになりやすいのは当然です。
ただし、タバコを吸っていない人でも、タバコの煙を間接的に吸い込む受動喫煙によって肺ガンを発症する恐れがあります。
・大気汚染空気中に含まれる汚染物質も肺ガンの原因の一つです。
実際に、車などの交通量が多い都市部や工業地帯に行くほど肺ガン患者数は増加する傾向にあります。
・食事直接的な原因となるわけではありませんが、栄養バランスが偏っていたり乱れた食生活を続けていると肺ガンを発症しやすくなります。
・アスベストアスベスト(石綿)とは、天然ケイ酸塩を主成分とする鉱物が繊維状に変化したもので、耐久性や防音性に優れていることから主に建築資材として利用されています。
ところが近年、アスベストには人体に有害な物質が含まれており、その粉塵を吸い込むと肺ガンなどの様々な病気を引き起こすことが明らかとなりました。
現在は規制されていますが、アスベストを使った建物や製品は少なからず残っており、個人では防ぎようがないため大きな問題となっています。

症状

肺ガンの初期症状として多いのは、せき、痰、少量の血液が混じった血痰。
これらは肺ガンの中でも、肺の入口の太い気管支に起こる進行前の「肺門部ガン」によく見られる症状です。
進行するにつれて、ぜん息のような息切れや呼吸困難、胸・背中・肩・腕の痛み、全身のだるさ、食欲不振、体重減少、発熱などが現れるようになります。
肺の奥に発生する「肺野部ガン」は、初期には症状がほとんどなく、ガンが進行してから胸の痛みや息苦しさなどが現れ始めます。
そこからさらに進行して末期になると、耐えられないほどの苦痛を伴うようになり、空気の通り道である気道が塞がれる閉塞性肺炎などを引き起こすことがあります。
また、肺ガンは全ガンの中でも他の部位に転移しやすく、転移した場所によって様々な障害が起こります。
特に肺野部ガンの場合、知らない間に転移し、突然大きな症状に襲われることもあるので注意が必要です。
・骨への転移ガンが転移した部位の骨に痛みを感じ、悪化すると骨がもろくなって骨折しやすくなります。
背骨に転移すると、神経が圧迫されて麻痺することがあります。
・脳への転移代表的な症状は、頭痛、吐き気、嘔吐。
脳の場所によっては、言語障害、感覚障害、視力障害などが起きたり、手足の麻痺やけいれんを起こして歩行困難となることがあります。
・リンパ節への転移せきが多くなったり、首のリンパ節がはれてきます。
左右の肺の間にある縦隔という部分のリンパ節に転移すると、上半身がむくんで紫色に変色し、呼吸が困難な状態となる上大静脈症候群を引き起こすことがあります。

初期症状について

全てのガンの中で、肺ガンによる死亡者数が最も多い理由は発見が遅れることで治療も遅れてしまうことです。
肺の内側には感覚神経がなく、そこに悪性腫瘍ができても痛みは感じません。
進行してから現れる胸の痛みは、ガン細胞が胸壁を侵すことで肺に水が溜まり、それが肺の外側を覆う胸膜を圧迫することによって起こるものです。
特に、肺の奥に悪性腫瘍が発生する「肺野部ガン」は初期の段階では全くと言っていいほど自覚症状がないため、ほとんどの人が気付かずに、そのまま進行してしまいます。
実際に、肺ガンは健康診断などで偶然見つかるというケースが多々あります。
肺の入口に悪性腫瘍が発生する「肺門部ガン」の場合は早い段階から症状が現れ始めますが、その代表的な初期症状はせき、痰、息切れ、発熱など、どれも風邪とよく似た症状であるため、あまり気に留めずに放置してしまう人が多いようです。
ただ、放置していても自然と治る風邪とは違い、肺ガンはこれらの症状が長期間続きます。
風邪薬を飲んでも治らなかったり、何日も発熱が続くようであれば肺ガンを疑わなければいけません。
このように肺ガンはなかなか気付きにくく、死亡率の高い病気ではありますが、初期の肺ガン治療による生存率は年々上昇しており、早期に発見できれば手術だけで完治することも可能です。
肺野部ガンの場合、初期症状はないもののX線写真に写りやすい性質を持っているので検査を受ければすぐに発見できます。
症状の有無に関係なく、定期的に肺ガン検診を受けておくことが何より大切です。

検査

肺ガンの検査は大きく分けて、肺や気管支に異常がないかを調べる「基本検査」と、基本検査などで肺ガンが疑われた際に詳しく調べる「確定検査」があります。
確定検査はCTや内視鏡の他にも様々な検査方法があり、それぞれに異なる特徴があるため、行われる場面も違ってきます。

基本検査

・胸部X線検査胸部にX線を照射して撮影し、肺に白っぽい影が見えれば肺ガンが疑われます。
心臓の影に隠れていたり、骨や血管が重なっている部分に悪性腫瘍がある場合は鮮明に写らないため見落としてしまう可能性がありますが、肺の奥の方にできた肺野部ガンは比較的見つけやすくなっています。
・喀痰細胞診顕微鏡を使い、痰の中にガン細胞が含まれているかを調べます。
自分で採取した痰を提出するだけの手軽な検査で、肺の入口にできた肺門部ガンの発見に有用です。

確定検査

・CT検査体の周りを回転するX線装置を使い、体を輪切りにした断面画像を撮影します。
通常、肺ガンが疑われた際に最初に行われる検査です。
X線画像は平面的であるのに対しCT画像は立体的で、より鮮明に写るので、通常のX線検査だと写らない部分を確認できたり、腫瘍が小さくて分かりづらい早期の肺ガンも発見することができます。
腫瘍の大きさや形、進行状態、他の部位への転移などを調べることができ、これらの情報を基に治療方針がたてられます。
・気管支内視鏡検査先端にカメラが付いたファイバースコープを口や鼻から挿入して内部を直接観察したり、病巣と思われる部分の細胞や組織を採取して調べる「生検」が行われます。
生検は最終診断として行われ、この結果によって肺ガンであるかを確定します。

肺ガンのステージ

ステージとは、ガンの進行度や病期のことで、腫瘍がどのくらい大きくなり、どこまで広がっているかを表します。
肺ガンでは「TNM分類」という指標を基にステージが決定します。
肺ガンのステージは全部で8段階ありますが、大まかに説明するとステージⅠは転移していない状態、ステージⅡは近くのリンパ節に転移した状態、ステージⅢは肺の外まで広がった状態、ステージⅣは他の臓器に遠隔転移した状態です。
数字が大きくなるほど肺ガンが進行していることを示します。
ただし、これは非小細胞肺ガン(腺ガン・扁平上皮ガン・大細胞ガン)の分類であり、進行の速い小細胞肺ガンは限局型と進展型のどちらかに分類されます。

小細胞肺ガン

・限局型(LD)腫瘍が片方の肺と、その近くのリンパ節にとどまっている状態。
・進展型(ED)限局型から進行し、腫瘍が肺から離れた部位に遠隔転移している状態。

非小細胞肺ガン

・0期腫瘍がまだ小さく、非常に早い段階の肺ガンです。
・ⅠA期腫瘍の直径が3cm以下で、肺の中にとどまっている状態。
・ⅠB期腫瘍の直径が3cm以上で、肺の外までは広がっていない状態。
・ⅡA期腫瘍の直径が3cm以下で、近くのリンパ節にとどまっている状態。
・ⅡB期腫瘍の直径が3cm以上で、近くのリンパ節にとどまっている状態。
・ⅢA期肺の外側を覆う胸膜や胸壁まで腫瘍が広がり、左右の肺に挟まれた縦隔という部分のリンパ節まで転移している状態。
・ⅢB期腫瘍が縦隔まで広がり、近くの臓器や首のリンパ節まで転移している状態。
・Ⅳ期脳、肝臓、骨、副腎など、肺から離れた部位に遠隔転移している状態。

肺ガン細胞の進行

ガン細胞は初めは小さなものですが、進行すると大きくなり、発生場所から他の部位へと広がっていきます。
治療方針を決める際には、この進行状態を確認しなければいけません。
肺ガンは、T(腫瘍の大きさと浸潤)、N(リンパ節転移)、M(遠隔転移)を表す「TNM分類」という指標を総合的に組み合わせることで分かります。
ここでは、肺ガン細胞の進行度(ステージ)を分類するTNM分類についてご紹介します。

腫瘍の大きさと浸潤

・T1a・T1bT1aは腫瘍の直径が2cm以下、T1bは2cm以上3cm以下。
・T2a・T2bT2aは腫瘍の直径が3cm以上5cm以下、T2bは5cm以上7cm以下。
もしくは、「臓側胸膜への浸潤がある」「主気管支への浸潤があるが、気管分岐部から2cm離れている」「肺門まで及ぶ無気肺か閉塞性肺炎があるが、片側の肺全体には及んでいない」のいずれかに該当する。
・T3腫瘍の直径が7cm以上。
かつ、「胸壁、横隔膜、縦隔胸膜などへの浸潤がある」「主気管支への浸潤が気管分岐部から2cm未満」のどちらかに該当する。
・T4腫瘍の大きさに関係なく、「悪性胸水や心嚢水が見られる」「縦隔、心臓、大血管、気管、食道などへの浸潤がある」「腫瘍と同じ肺葉内に腫瘍結節が見られる」のいずれかに該当する。

リンパ節への転移

・N0リンパ節への転移なし。
・N1腫瘍がある肺と同じ側の肺門リンパ節への転移がある。
・N2腫瘍がある肺と同じ側の縦隔か気管分岐部のリンパ節への転移がある。
・N3腫瘍がある肺とは反対側の縦隔か肺門のリンパ節、または鎖骨上窩リンパ節への転移がある。

他臓器への遠隔転移

・M0遠隔転移なし。
・M1a腫瘍とは反対側の肺内の腫瘍結節、胸膜結節、悪性胸水、悪性心嚢水が見られる。
・M1b脳、肝臓、骨、副腎などへの遠隔転移がある。

手術

肺ガン治療には、外科療法(手術)、化学療法、放射線療法などの様々な方法があり、どの治療法が適しているかは、ガン細胞の種類や進行度によって異なります。
肺ガンの手術は、病巣(腫瘍ができた部分)を切除することが主な目的です。
ガン細胞のサイズが小さく、他臓器へ転移していない初期の段階(小細胞肺ガンなら限局型、非小細胞肺ガンならⅢA期まで)に行われます。
手術範囲の異なる「標準手術」と「縮小手術」があり、どちらを行うかはステージによって変わります。
切除する範囲が広くなるほど体への負担が大きく、術後に息切れが起こるなど患者によっては症状が悪化してしまうケースも少なくありませんが、外科療法は腫瘍を完全に取り除くことができるので、完治の可能性が最も高い治療法です。
手術方法は大きく分けて以下の2種類があります。
・胸腔鏡手術胸壁に2~3cmの穴を4~5箇所ほど開け、そこに小型カメラの付いた胸腔用の内視鏡や自動縫合器などの器具を挿入し、病巣を切除します。
進行前の早期の肺ガンのみに有効で、高度な技術を要する難しい手術ですが、体への負担や苦痛が少なく、入院期間も短く済み、手術跡も目立ちにくいという利点があります。
・開胸手術肩甲骨に沿って背中から胸まで40cmほど切開し、肋骨の間を広げて病巣を切除します。
病状が進行し始め、胸腔鏡手術では対応できない場合に行われます。
肺ガンは早期に発見できるケースが少ないため、外科療法では開胸手術がほとんどです。
病状によっては小さな傷で済むこともありますが、基本的には大きな手術跡が残り、入院期間が長く、術後しばらくは痛みが続くこともあります。

抗がん剤治療

抗ガン剤治療とは、薬を投与して腫瘍を小さくしたり無くそうとする化学療法のこと。
広範囲のガン細胞を攻撃・破壊し、進行を抑えることが主な目的です。
肺ガン治療に使われる抗ガン剤の種類は複数あり、病状などに応じた様々な組み合わせで投与されます。
その方法は注射か点滴、あるいは内服薬で血液中に送り込みます。
抗ガン剤治療はステージに関係なくできることから6割近くの肺ガン患者が行っており、中でも小細胞肺ガンと、非小細胞肺ガンⅢ・Ⅳ期の治療に多く用いられています。
特に小細胞肺ガンの治療には化学療法が最も適しており、他の治療法を行う際にも、その補助として抗ガン剤が使われます。
抗ガン剤治療のみで肺ガンを完治させることは困難ですが、症状を緩和させる効果が期待できます。
抗ガン剤は全身のガン細胞に働きかけることができるので、局所的に治療できないほど腫瘍が広がっている場合にも有効です。
ただし、化学療法の一番の問題点は副作用。
肺ガンの抗ガン剤による副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、脱毛、手足のしびれ、口内炎といった自覚症状の他、骨髄の働きが低下することもあります。
抗ガン剤は効き目が強すぎると、ガン細胞だけでなく他の正常な細胞まで傷つけてしまう恐れがあるのです。
骨の中で血液の細胞を作り出している骨髄は抗ガン剤の影響を受けやすく、白血球の減少によって感染症にかかりやすくなったり、赤血球の減少によって動悸や立ちくらみ、血小板の減少によって出血しやすくなります。
そのため、抗ガン剤治療中は激しい動作を控えたり食事に気をつけるなど、様々な対策を行わなければいけません。

放射線治療

放射線治療とは、高エネルギーの放射線(X線など)を体外から照射する治療法のこと。
局所的にガン細胞を攻撃・破壊し、進行を抑えることが主な目的です。
小細胞肺ガン、非小細胞肺ガンのⅢ・Ⅳ期、体力が低下している人の肺ガン治療に用いられることが多く、通常は抗ガン剤の補助として、化学療法と併用して行われます。
外科療法ほどではないものの、化学療法よりは完治の可能性が高く、症状を緩和させ、ガン細胞の増殖を防ぐことができます。
また、治療によってガン細胞が縮小した小細胞肺ガンの場合は頭部に放射線を照射することで脳への転移を防いだり(予防的全脳照射)、骨への転移を防いで骨折などを未然に予防することも可能です。
しかしながら、抗ガン剤と同じく放射線にも副作用のリスクが伴います。
ガン細胞の周辺にある正常な細胞や組織にまで放射線が当たり、放射線肺臓炎、放射線食道炎、放射線皮膚炎などやけどのような症状を一時的に引き起こすことがあります。
ただ、現在ではこういった副作用を減らすために、周りの細胞などへの影響を最小限に抑えた治療法が普及しています。
・定位放射線治療360度回転する装置を使い、特定の部位に対して多方向から集中的に放射線を照射します。
病巣の形に合わせて照射し、ガン細胞をピンポイントで狙うことができるので、従来の放射線治療と比べて正常な細胞の損傷が少なくなります。
・陽子線治療陽子線とは、元素の中で最も軽い水素の原子核をスピードアップさせた放射線のこと。
定位放射線治療と同様に、他の細胞などを極力傷つけずにガン細胞のみを狙い撃ちすることができます。

レーザー療法

レーザー療法とは、光感受性物質とレーザー光が組み合わさって起こる光化学反応を利用した光線力学的治療法(PDT)のこと。
局所的にガン細胞を攻撃・破壊し、進行を抑えることが主な目的です。
光感受性物質とは、病巣(ガン細胞)に集まる性質を持った物質のこと。
まずは光感受性物質を静脈に注射し、内視鏡で病巣を観察します。
その後、光感受性物質がガン細胞に集まったのを見計らってそこに低出力レーザーを照射します。
これにより、他の細胞を傷つけることなく、ガン細胞を死滅させることができます。
ガンのレーザー治療は他に、高出力レーザーで腫瘍を焼き切る「腫瘍焼灼法」がありますが、高エネルギーであるがゆえに出血を起こしたり、炎症が悪化して穴が開いてしまうことがあるため、現在は腫瘍焼灼法よりも少ないエネルギーで行えるPDTが主流です。
PDTレーザー療法が有効なステージは0期、つまり、非常に早期の肺ガン患者に対して行われます。
通常、初期の肺ガンには外科療法が行われますが、手術は基本的に体への負担が大きく、体力の低下している高齢者などには行えないケースが多々あります。
一方、レーザー療法は体を切開する必要がないので手術跡が残る心配もなく、体に負担をかけずに安全に治療できるのが利点です。
低エネルギーのレーザーなので熱さや痛みは感じず、比較的簡単に行えます。
さらに、1cmほどの非常に小さな腫瘍であれば、レーザー療法だけで90%以上という高い確率で完治できると言われています。
ただし、このレーザー療法は初期の肺ガンの中でも肺門型の一部という限られた肺ガン患者にしか行うことができません。

生存率

生存率とは、病気と診断され、治療を開始してから一定期間が経過した後に生存している患者の割合を表した過去の統計のこと。
治療効果を判定する上で重要な指標となります。
肺ガンでは5年を目安とした「5年生存率」が多く用いられ、ガン細胞の種類、ステージ、治療法ごとに算出されます。
ただし、ガン細胞の種類やステージが同じでも、転移している場所や患者の体調、何箇所に転移しているかなどによって数値は変わってきます。
また、病院によっても少し異なりますが、おおよその生存率は以下の通りです。
生存率はあくまで過去の統計であり、ガン治療は日々進歩しているので確率が低いからといって希望がないわけではありません。
くれぐれも数字に振り回されず、参考程度にとどめてください。

小細胞肺ガン

・限局型抗ガン剤治療と放射線治療を併用して行った場合、5年生存率は20~25%、3年生存率は25~30%、2年生存率は40~50%。
・進展型抗ガン剤治療を行った場合、3年生存率は約10%。

非小細胞肺ガン

・0期腫瘍の直径が1cm以下で外科療法(手術)を行った場合、5年生存率はほぼ100%。
・ステージⅠ(ⅠA・ⅠB期)手術を行った場合、5年生存率は70~80%。
・ステージⅡ(ⅡA・ⅡB期)手術を行った場合、5年生存率は50~60%。
・ステージⅢⅢA期で手術を行った場合、5年生存率は30~40%。
抗ガン剤治療と放射線治療を併用して行った場合、A・B期ともに5年生存率は15~20%、2年生存率は約40%。
・ステージⅣ抗ガン剤治療を行った場合、5年生存率は10%未満、1年生存率は50~60%。

再発と転移

再発とは、症状の治まった病気が再び起こること。
転移とは、病巣が他の場所に移ることです。
一度発生したガン細胞は増殖を繰り返し、他の部位へと広がっていきます。
治療によってガン細胞が減少すれば症状は多少治まりますが、少しでも体内に存在していると、そこからどんどん増殖し、再び症状が現れます。
肺ガンは特に再発しやすく、完治率の高い初期段階で手術した場合でも10~20%の人は再発すると言われています。
なぜ完治できないケースがあるのかと言うと、あまりにも腫瘍が小さいと、検査で見つけることが難しくなるからです。
手術の際に腫瘍を取り残した可能性もゼロではありませんが、大抵は、小さなガン細胞が遠隔転移していたことによって再発します。
そのため、同じ部位に再発するケースは少なく、およそ8割が肺から離れた場所で腫瘍が見つかります。
前回と同じ部位、もしくはその周辺で再発することを「局所再発」、他の部位で再発することを「遠隔再発」と言います。
肺ガンが転移しやすい場所は、脳、骨、肝臓、副腎です。
脳に転移すると頭痛や吐き気、骨に転移すると腰痛や骨折、肝臓に転移すると黄疸や浮腫など、これまでとは違った症状が出始めます。
遠隔再発は局所再発よりも生存率が低く、完治させることはほぼ不可能です。
局所再発であれば手術によって腫瘍を全て取り除くことができますが、他の部位にまで腫瘍が広がった遠隔再発の場合は手術ができず、全身に作用する抗ガン剤で進行を抑えるしかありません。
また、前回の治療で抗ガン剤を使用していた場合、再発したガン細胞は抗ガン剤に対する耐性を持っていることが多いため、治療効果も低くなってしまいます。

予防

禁煙

肺ガン予防で最も重要なのは、肺ガンの最大要因であるタバコを止めること。
喫煙者は非喫煙者に比べて肺ガンになるリスクが5倍以上も高く、非喫煙者でも、タバコを吸う人が身近にいる場合は2倍になると言われています。
喫煙の習慣が身についているとなかなか断ち切ることはできませんが、最近では禁煙グッズが数多く販売されており、病院でも禁煙治療が受けられるようになっています。
どうしても禁煙できない人や、副流煙を防ぐことができない環境にいる人は最低でも年に1回、定期的に肺ガン検診を受けることをおすすめします。

食事

肺ガンに限らず、あらゆる病気を予防するためには栄養バランスのとれた食事で健康な体を作ることが大切です。
中でも特に摂っておきたいのは、活性酸素の働きを抑える抗酸化作用に優れた栄養素。
活性酸素は細胞を老化させ、肺ガンをはじめ様々なガンを引き起こすとされる物質です。
ビタミンC・ビタミンE・ビタミンA(βカロテン)は「抗酸化ビタミン」と呼ばれるほど高い抗酸化作用があり、緑黄色野菜や果物に多く含まれています。
また、リンゴや赤ワインに含まれるポリフェノール、トマトに含まれるリコピン、緑茶に含まれるカテキンなども抗酸化作用が高く、ウコンに含まれるクルクミンはタバコの有害物質の排出を促す効果があります。
その他、大豆製品に含まれるフィトエストロゲンにはガンを予防する作用があると言われています。

運動運動

不足が続くと体力が落ち、病気と戦う免疫力も低下します。
無理に激しい運動を行うと、かえって体に負担がかかりますが、日常生活の中で適度に体を動かすことは肺ガン予防に有効です。

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