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甲状腺髄様がんを詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/07/17 甲状腺, がん

甲状腺髄様がん(こうじょうせんずいようがん)とは、甲状腺がんの一種であり、この部位のがん全体の1~2%程度の発症率があります。

誰でもかかりやすい類の病気ではなく、発症は比較的まれといわれていますが、原因のなかには遺伝性のものが含まれます。

甲状腺髄様がんを患う人の約3分の2はたまたまがんができての発症(散発性がん)ですが、約3分の1は遺伝性のがんであるといわれています。
遺伝性のがんは、血縁者の半分ほどは同じ種類のがんの発症率が高くなります。

そのため、血縁者に甲状腺髄様がんの患者がいる場合はとりわけ注意が必要といえるでしょう。
このような特徴から、家族に甲状腺髄様がんが発見されると、そのほかの家族も検査を受けるケースがあります。

同じ甲状腺のがんである乳頭がんや濾胞(ろほう)がんに比べ、症状の進行が速いのも特徴です。
転移しやすいのはリンパ節、肝臓、肺が多く見られます。

甲状腺のがんは人口100,000につき男性で約3%、女性は約9%の人が患うといわれているがんです。
男女比ではやや女性の患者のほうが多い病気といえるでしょう。

また、年齢別では全体を見ると50代以上での発症の確率が高いとされていますが、女性だけに絞ると30代、40代での発症が多いとされており、男性に絞ってみると60代での発症が多いというのも特徴の一つです。

甲状腺にできるがんの種類

乳頭(にゅうとう)がん

甲状腺にできるがんの実に90%近くを占める、一番できやすいがんといえます。

患者は40~50代にかけての女性がもっとも多く、リンパ節への転移も比較的よく見られることから主な治療法は手術となります。
進行は非常にゆっくりとしたペースです。

濾胞(ろほう)がん

このがんは乳頭がんの患者よりさらに高齢の人に発症しやすいとされています。

血流に乗ることで骨、肺など、甲状腺から離れた部位にも転移するのが特徴です。
甲状腺にできるがんの約5%を占めます。

悪性(あくせい)リンパ腫(しゅ)

甲状腺にできるがんの約2%を占めるがんの種類です。
ほかの部位の血液やリンパ節にもできるがんですが、甲状腺にできると甲状腺がんの一種として扱われます。

年代別では40代からの発症がもっとも多く、一つの特徴として橋本病(はしもとびょう)を長く患っている人に多く見られるというものがあります。

未分化(みぶんか)がん

非常に進行が速いことが特徴で、甲状腺がんの約2%はこの未分化がんであるといわれています。

年代別で見ると高齢者層での発症が多く、甲状腺だけではなく、周囲の臓器、また甲状腺から離れた部位にも転移します。
進行の速さや、効果的な治療法がないことから最終的には死に至るがんの種類です。

未分化がんの患者のうち80%は、診断から1年以内に死亡するというデータもあるほどです。
男女比ではやや女性の発症率が高くなっています。

放射線誘発性(ほうしゃせんゆうはつせい)甲状腺がん

甲状腺が被爆することによって起こるがんです。

比較的高線量の環境放射線にさらされることで発症すると考えられていますが、これらは放射線治療下においても起こるとされています。

被ばくから時間が経ってから発見されることが多く、10年後~40年後に発症するケースもあり、被ばくでのリスクが長期間続くことを示しています。

甲状腺がんの治療のために放射線治療が行なわれている患者の場合、毎年の検査が推奨されています。

甲状腺髄様がんの原因

遺伝性の原因

遺伝性の甲状腺髄様がんはすでに述べたとおり、血縁者の半分に発症の可能性があります。

遺伝性ではない原因

のど近くの皮膚の下にある甲状腺という臓器にがんができます。
血清カルシウム・リン酸の濃度を下げるホルモン・カルトシニンを生み出す細胞から、何らかの原因でできるがんといわれています。

家族間での発症の率が比較的高いことから、遺伝子の変異が病気の原因の一つと考えられています。

また、放射線での被ばくも原因と考えられており、チェルノブイリ原子力発電所の事故によって、周辺に住む住民に甲状腺髄様がんが多く発見されたことが知られています。

わずかながら放射線の発生するレントゲン撮影や放射線治療が行なわれたケースでも、発症の確率は高くなります。
放射線を原因とする発症は、とりわけ小児に多く見られるといわれています。

甲状腺がんのリスク因子

リスク因子とは、その病気を患う可能性が高くなるもののことです。

甲状腺がんにはさまざまなリスク因子がありますが、当てはまる項目があれば必ず発症するものではなく、また当てはまらない場合でも発症する可能性がまったくないというわけではありません。

1.性別が女性である
2.25歳から65歳くらいの年齢である
3.甲状腺になんらかの疾患を抱えている、抱えたことがある
4.家族に甲状腺がんを患った人がいる
5.アジア系人種である

甲状腺がんのリスク因子として挙げられる代表的なものがこれらの項目になります。
このほかにもいくつかのリスク因子があります。

甲状腺髄様がんの症状

初期の段階では、無症状であることが多く、本人が無自覚なまま進行することがあります。

また、病気の発見も本人ではなく、家族やまわりの人にのどのしこりを指摘されることで気付くケースが多いという特徴があります。

感じやすい自覚症状としては、のどの痛み、食べ物の飲み込みがしにくい、のどの酷使や風邪でもないのに声がかすれる…といった違和感が挙げられます。

症状が進行するとのどのしこりで気道が圧迫されることでの呼吸困難、甲状腺の近くの神経の圧迫、低カルシウム血症などが起こる場合があります。

また、進行するにつれて痰(たん)やつばに血が混じるなどの症状が続くこともあります。

甲状腺髄様がんの検査と診断

甲状腺髄様がんが疑われる場合、まず最初に穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)という、甲状腺に針を刺す検査を行ないます。

専用の針で細胞を抜き取り、その細胞を検査して腫瘍(しゅよう)の種類を調べるものです。

結果的に甲状腺髄様がんであると判断された場合、血液検査でカルシトニン、CEAなどの物質の値を確認します。
そのほか、より詳しく病状を知るための検査方法がいくつかあります。

その他の詳しい検査方法

甲状腺超音波検査

甲状腺がんの位置や大きさを調べることを目的として実施されています。
超音波検査のほかには、頸部CT検査もこのカテゴリに含まれる検査方法です。

体や疾患が疑われる部位に超音波を当て、跳ね返ってくる信号の状態から症状を推測します。

臓器などの体の内部の状態を画像化することができ、検査にかかる時間は約5分と短く、患者の体に負担のかからない検査方法です。

遺伝子検査

遺伝的な異常が深く関わる病気であることから行なわれている検査方法です。
患者本人だけではなく、近親者に対して行なわれるケースもあります。

この検査では遺伝性の甲状腺髄様がんなのか、散発性のがんなのかがわかります。
遺伝性であった場合、甲状腺髄様がんに伴って起こる代表的な異常がないかの検査も行なわれることが多いでしょう。

これらの検査のほか、種類が多い甲状腺がんのどれであるかを識別するための血液検査や甲状腺に対する超音波検査を行なわれています。

甲状腺髄様がんに伴って起こりやすい異常

褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)

腎臓付近にある副腎と、その周囲の神経にできる腫瘍のことを褐色細胞腫と呼びます。
カテコールアミンというホルモンの異常によって腫瘍ができる仕組みです。

この異常が起こる原因にはさまざまなものがありますが、一部の患者では遺伝的要因が大きいとされています。
日本での患者数は約3,000人で、小児慢性特定疾患の一つに数えられている病気です。

甲状腺髄様がんの治療方法

遺伝子の異常が原因ではない、たまたまがんを患う散発性甲状腺髄様がんの場合、多くは乳頭がんの治療と同等の手術が行なわれます。

手術はがんの広がりを確認し、がんになった部位を切除するというものです。
がんの範囲が小さいときは、甲状腺のすべてを摘出せずに済むケースもあります。

遺伝性の甲状腺髄様がんだった場合は、がんができる場所が決まっていて、甲状腺の両側に症状があらわれます。

こちらの治療法も手術となりますが、甲状腺の一部ではなくすべてを摘出する方法が選択されることになるでしょう。

褐色細胞腫を併発している場合

甲状腺髄様がんと共に褐色細胞腫の症状が認められるケースでは、甲状腺がんの治療の前に細胞腫を取り除かなければなりません。

これは手術中に高血圧クリーゼを引き起こす可能性があり、危険なためです。

そのため、甲状腺髄様がんと褐色細胞腫が併発している場合、まず細胞腫の手術を行ない、そののちに甲状腺髄様がんの摘出を行なうことになります。

高血圧クリーゼについて

急激な血圧の上昇によって、すぐに血圧を下げなければならない状況に陥る症状のことをいいます。

褐色細胞腫があると高血圧クリーゼに陥る可能性が高いとされており、褐色細胞腫クリーゼという呼び名があるほどです。

血圧が上昇したまま放置すると、臓器に重い障害が発生するなどの危険が伴います。

放射線を用いた治療法

摘出しきれなかったがんがある場合には、放射線による治療が選択される場合があります。
また、がんの種類によっては放射線ヨード治療というアイソトープ療法が有効な場合があります。

これはがん細胞がヨウ素を取り込む性質を利用した治療法で、この性質を持つ乳頭がんや濾胞がんの治療で選択されます。
しかし、髄様がんはこのようなヨウ素を取り込む性質を持たないために、放射線ヨード治療を行なうことはできません。

アイソトープ療法

放射性物質であるラジオアイソトープを含んだ薬剤を使用する治療法です。
体内に入った薬剤はがん細胞などの特定の部位に集まる性質があります。
体内への投与は注射、内服などの方法があります。

化学療法

手術ではなく、薬剤を用いた治療法です。
抗がん剤を投与して症状の経過を観察します。

薬剤の効果によるがん細胞の増殖の抑制、がん細胞の破壊効果を期待して行なわれている方法です。

髄様がんでの治療法に用いられるケースはあまりありませんが、未分化がんの治療法として多くの薬剤の投与が行なわれます。

毒性が強く、多くの未分化がんの患者に大きな効果があるわけではなかったドキソルビシンが長く使われてきましたが、近年は副作用が少なく、さらに治療効果にも期待できるパクリタキセルが注目されています。

甲状腺ホルモン療法

甲状腺を刺激するホルモンを抑制してがん細胞が増殖するのを防ぐ目的で行なうものと、甲状腺がんの治療によって生産ができなくなった甲状腺ホルモンを補充するものがあります。

分子標的療法

がん細胞のみを攻撃する性質を持つ薬剤などを用いた治療法です。
甲状腺がんの治療に用いられる代表的なものにはチロシンキナーゼ阻害薬などがあります。

甲状腺髄様がんの治療後の生活

がんの再発がないかを確認したり、治療後の経過を観察したりする目的で、6ヶ月ごとの検査やカルシトニンのチェックを行ないます。
検査には診断にも用いられる超音波検査、CT検査などがあります。

甲状腺がんには治療後の経過が不良になる恐れがある原因としていくつかの項目があり、遺伝子異変や手術後に残ったがんの病変、離れた場所への移転、年齢が50歳以上の患者、性別が男性であることなどが挙げられます。

これらの項目に当てはまらなくても再発する可能性がまったくないわけではありませんし、治療後もしっかりと定期検診や健康チェックを怠らないようにしたいものです。

子どもに対する甲状腺がんの遺伝子検査

甲状腺髄様がんは遺伝子の異常によって発症リスクが高くなるとされるがんの種類です。

そのため、家族のなかに甲状腺がんを発症した人がいれば、その家族にも検査が行なわれるケースがあります。
これらの遺伝子の異常に左右されやすい病気は、一般的に成人を迎えて以降に発症する可能性が高いとされています。

しかし、成人に達する前にリスクがどの程度あるのか知りたい、予防的手術を行いたいといった場合に、子どもに対して遺伝子検査を実施するケースがあります。

本来であれば遺伝子検査は、本人の意志によって決定されるべきですが、小さな子どもにそれを求めるのは難しいでしょう。
そのため、早めに遺伝子検査を行なうことで、その後に有利に働くものであれば親が検査を決めても良いとの見解があります。

しかし、甲状腺の疾患やそれに伴う褐色細胞腫などは定期的な検査での早期発見が可能な環境にあれば、実際に発症してからでも適切な対処が可能という観点から、予防手術までを行なうケースはないといえるでしょう。

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