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エルシニア腸炎を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/06/21 腸の病気

エルシニア腸炎とは

エルシニア腸炎(えるしにあちょうえん)とは、エルシニア属菌が原因菌となって引き起こされる腸の感染症であり、細菌性胃腸炎・感染性胃腸炎の一種です。

食中毒として起こる割合が高く、保菌動物によって汚染された飲食物で感染し発症してしまいます。

お腹が痛くなったり下してしまったりするほか、嘔吐したり熱が出たりすることが主な症状としてあります。
大人に起こることは非常に少なく、幼児に引き起こされている割合が高い感染症として知られています。

人から人への感染はまれですが、保育所や小学校での集団感染が発生することがあります。
食中毒の疑いがある場合、25時間以内に最寄りの保健所に届出を行なうことになっている感染症です。

自然に軽快するケースが多く、腹痛、下痢、発熱などの対症療法や食事療法が行なわれますが、症状がなくなったあとも糞便などから菌が検出される状態が長く継続します。

原因菌の特徴

エルシニア腸炎を引き起こす原因菌はエルシニア属菌ですが、ほとんどは食中毒菌として知られているエルシニア・エンテロコリティカです。

エルシニア菌は豚、牛、馬、羊、犬、猫、魚類、カエル、ねずみなどが保菌動物であり、鳥類で発見されることは少ないです。
保菌動物の糞便で汚染された飲食物を人間が摂取することにより、エルシニア腸炎は起こります。

エルシニア菌は低温細菌であり、0~4℃で発育可能なため、冷蔵保存している食品のなかで勢力を拡大し、食中毒を引き起こします。
ただ熱への耐性は低く、加熱調理を行なうことによって予防することが可能です。

細菌性胃腸炎・感染性胃腸炎とは

エルシニア腸炎を含む細菌性胃腸炎とは、感染性胃腸炎の一種です。
感染性胃腸炎は細菌性胃腸炎のほかに、ウイルス性胃腸炎があります。

いずれも感染して発症する胃腸炎であるため、感染性胃腸炎の一種として含まれているというわけです。

菌性胃腸炎は細菌が原因となって、ウイルス性胃腸炎はウイルスが原因となって起こる感染症です。

細菌性胃腸炎はエルシニア属菌によるもののほか、カンピロバクター、黄色(おうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)、腸炎ビブリオ、サルモネラ、ボツリヌス菌などが原因菌となって起こるものがあります。
一方、ウイルス性胃腸炎はノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルス、アストロウイルス、サッポロウイルスなどによって起こるものがあります。

ウイルス性胃腸炎が比較的寒い時期に多く発生している感染症であるのに対し、細菌性胃腸炎は暑い時期に多く発生しやすくなっています。

細菌性胃腸炎は食中毒などと呼ばれることがあり、ウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症という呼称が使用されていることがあります。

ウイルス性胃腸炎は、口から入り込んだウイルスが十二指腸から粘膜上皮に感染し、症状が引き起こされて、主な症状としてはお腹が痛くなる、お腹を下す、熱が出る、吐くことがあげられます。

ウイルスの種類や感染した人によっては、お腹を下すことがなく、お腹の張った感じやお腹の痛みだけの症状が出現するケースもあります。

ウイルスが含まれている吐しゃ物により感染するケースもあるほか、とくに感染力のあるウイルスは、ウイルスによって汚染されたところに触っただけで感染してしまうリスクがあります。

これに対し、細菌性胃腸炎は肉、魚、たまごなど原因食品の摂取後、5~72時間のあいだに症状が引き起こされるようになり、お腹の痛みを感じたり、お腹を下したりしてしまいます。
細菌の種類によっては、重症例では命を落としてしまうことがあります。

エルシニア腸炎の原因

エルシニア腸炎はエルシニア菌、とくにグラム陰性桿(かん)菌のエルシニア・エンテロコリティカによって引き起こされる場合がほとんどです。
エルシニア菌は豚、牛、馬、羊、犬、猫、魚類、カエル、ねずみなどが保菌動物であり、鳥類で見つかることは少ないです。

保菌動物の糞便によって汚染された飲食物を摂ることによって腸管感染を招いて、のちに発症します。

この病気の原因となる主な食品としては、食肉、牛乳、乳製品、井戸水などをあげることが可能です。
なお、食肉のなかではとりわけ豚肉に注意しなければいけません。

人から人への感染はまれですが、大人に比べて小さい子どもが感染しやすく、集団感染が保育所や小学校で発生するリスクがあります。

また、エルシニア腸炎はペットとの接触によって感染し、発症することもあるため、食中毒とは別に警戒しなければいけません。

ほかの細菌性胃腸炎の原因

細菌性胃腸炎は原因菌となる細菌の種類によって原因が異なります。

エルシニア腸炎の場合は原因菌であるエルシニア菌が鳥類で発見されることは少ないですが、たとえばカンピロバクターが原因となる細菌性腸炎では鶏の腸管に多くせい息しており、鶏肉で感染している割合が高いです。

そのほか、黄色ブドウ球菌はおにぎり、弁当、サンドイッチ、ケーキなどが主な原因食品としてあげられ、腸炎ビブリオは海産物が原因となることが多いです。

また、サルモネラはたまご、牛や豚、鶏などの食肉、ボツリヌス菌はいずし、辛子れんこんといったものが主な原因食品としてあげられます。

エルシニア腸炎の症状

エルシニア腸炎は感染後、エルシニア・エンテロコリティカの場合は半日~6日間ほどの潜伏期間を経て症状が出現するようになります。

腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱が主症状であり、ほかには咳(せき)頭痛、発疹(ほっしん)、関節痛(かんせつつう)、のどの痛み、敗血症(はいけつしょう)といった症状が起こることがあります。

お腹の痛みは右下腹部の割合が高く、下痢の症状には血便が付随することがあります。
また、発熱の症状は高齢者のエルシニア腸炎では起こりにくいです。

ほかの細菌性胃腸炎の症状

カンピロバクターの場合、1日~1週間ほどの潜伏期間を経て発症します。
主症状としては熱が出る、頭痛がする、だるくなる、お腹を下す・痛くなるといったものがあげられます。

また、サルモネラは6時間~3日間ほどの潜伏期間を経て、吐き気、下腹部の痛み、発熱、下痢などの症状が出現し、腸炎ビブリオは8時間~1日の潜伏期間を経てへそのまわりの痛み、下痢、吐き気、嘔吐、発熱といった症状が引き起こされます。

そのほか、黄色ブドウ球菌は強い吐き気、嘔吐、お腹の痛みや下痢などの症状が、30分間~6時間の潜伏期間を経て出現。

ボツリヌス菌は8~36時間の潜伏期間を経て脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、便秘などの症状を引き起こし、処置が遅くなると呼吸困難におちいるなどして命を落としてしまいます。

エルシニア腸炎と共通、または似たような症状もありますが、潜伏期間や症状の種類がどの細菌性胃腸炎なのかによって異なるということがご理解いただけたのではないでしょうか。

エルシニア腸炎の検査・診断

診療科

原因食品になり得る飲食物を摂取し、腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐といったエルシニア腸炎の症状が出現した場合、何科に行けばよいのでしょうか。
このことに関してですが、一般内科か消化器内科で対応してくれます。

エルシニア腸炎は自然に軽快することが多い病気ではありますが、別の病気による症状かもしれませんし、エルシニア腸炎自体が重症になることがありますので、苦しい症状を放置することなく受診しましょう。

検査・診断方法

どこでなにを摂取したのか、食事に関する情報が重要な手がかりとなります。
また、まわりに同じ症状が出現している人の有無、海外旅行に出かけたことも、エルシニア腸炎の疑いがあるかどうか確認するための大切な情報です。

検査は細菌検査、血液検査が行なわれています。
細菌検査では便を調べ、エルシニア菌に感染しているかどうかを調べます。

一方の血液検査は、エルシニア菌の抗体が増えているかどうかを調べることを目的に行なわれています。
便を調べてエルシニア菌が検出されると診断確定ですが、検査してすぐ結果がわかるわけではありません。

そのため、検査をすることなくエルシニア腸炎か感染性胃腸炎の疑いがあるとひとまず判断し、治療が開始される形になります。

エルシニア腸炎の治療

薬剤の使用

エルシニア腸炎は自然に軽快することが多く、腹痛、下痢、発熱などの対症療法、食事療法が行なわれていますが、症状が改善しない場合、重症の場合、合併症を引き起こしている場合には、抗菌薬を投与する治療法が選択されます。

セフォタキシム、フルオロキノロン、ST合剤といった種類の薬剤が効果を発揮するといわれています。

脱水症の対抗手段

下痢や嘔吐の症状によって体内の水分が消失し、吐き気や食欲不振の症状で水分補給量が減少し、脱水症を招いてしまうリスクがあります。

脱水症は水分だけでなく塩分も補給することが大切であり、経口補水液を飲む対抗手段が有効です。
なお、口からの水分補給が行なえない場合には病院で点滴を受けることで、必要なだけの水分を補うようにします。

エルシニア腸炎の予防

よく火を通す

肉類の調理を行なう際には、十分に火を通すことが大切です。
エルシニア腸炎の原因菌であるエルシニア菌は熱に弱いため、加熱調理を行なうことによって感染を防ぐことが可能です。

調理が済んだら早めに食べる

十分に加熱調理を行なうだけではなく、調理が終わったあとは早めに全部食べてしまいましょう。
ちょっとしたことではありますが、このこともエルシニア腸炎の対抗手段の一つに含まれます。

適切に保存する

生肉などを長期間にわたり冷蔵保存するのはやめましょう。
長期保存をしたい場合には冷蔵保存では冷凍保存することが大切です。
エルシニア菌は低温細菌であり、0~4℃の環境下でも増殖することが可能なためです。

動物・人との接触

エルシニア腸炎は動物との接触が原因となって原因菌に感染し、発症することがあります。
動物を触ることを避けるか、触ったあとには必ず手洗いを行ないましょう。

なお、エルシニア腸炎は人から人への感染はまれな病気ですが、本人だけでなく家族を含めたまわりの人もこまめな手洗いを行なうことがエルシニア腸炎の大切な対抗手段といえるでしょう。

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