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脳動静脈奇形を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/24 頭・脳・神経の病気

脳動静脈奇形とは(概要)

脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)は、脳の血管が先天性疾患により異常接合を起こし、通常であれば毛細血管を介してつながるはずの動脈と静脈が直接につながってしまい、異常血管の塊であるナイダスを形成する状態のことです。
血管がつながったことにより動脈の血が直に静脈に流れ込んでしまうので、高い圧力がかかってしまい変形や破裂のリスクが高まります。
とくに、若年者のクモ膜下出血の原因となるケースが多く報告されています。
発症部位はさまざまで、脳の内部や表面、硬膜などにあらわれます。

脳動静脈奇形の原因

先天的な疾患であり、原因はわかっていません。
母胎内で脳血管の正常な形成ができなかった結果として発生します。

脳動静脈奇形の症状

脳動静脈奇形は、それだけでは何も症状は起こしませんが、血管がもろくなることから出血しやすくなり、それにより脳出血などさまざまな症状に発展します。
そのため、何らかの症状が引き起こされるようになってはじめて発覚するパターンが多いのが特徴です。

一般的には脳動脈瘤破裂に比べると軽い症状で済むことが多いようですが、脳内出血には違いありませんので、軽視することはできません。
40~80%の脳動静脈奇形は、破裂してクモ膜下出血や脳出血を起こします。
一般的に血液の流れは動脈のほうが強い勢いで流れますが、脳動静脈奇形では動脈血の圧力に押されて静脈血管が破裂するケースが多く、そのため静脈性出血という比較的程度が軽い出血となります。
もちろん、出血量が多ければ重症化し死亡することもありますので、甘く見てはいけません。

また、どちらかといえば小さい脳動静脈奇形の方が、出血しやすいようです。
脳動静脈奇形の破裂は年間10万人に1人の頻度で、より重篤な脳動脈瘤破裂の約1/10程度となっていますが、若年者に発症しやすい傾向があり、男性が多いという特徴があります。
大きい脳動静脈奇形の場合、けいれん発作で発症する傾向があります。
ジャクソン型けいれんといって、体の一部がけいれんして次第に広がっていくケースが多いですが、突然意識を失って全身けいれんを起こす大きな発作も起こりえます。
ほかには、脳内出血の影響を受けた部位に応じて、片麻痺(かたまひ)や視野障害、感覚障害、言語障害などが起こります。

また、頭痛、吐き気、嘔吐が自覚症状として出ることもあり、頭痛については慢性化することもあります。
出血まで至らなくても頭痛の原因となることがあります。
頭痛の出方は人それぞれですが、体調が悪いときに頭痛が出る、眼の奥が痛い、あごや首が痛むなど、偏頭痛や群発地震などとは違った症状になります。

また、血液が通常のルートで流れないことにより、脳細胞に酸素や栄養が充分に供給されず、老廃物や二酸化炭素の排出がうまくいかない箇所が出てきます。
そのため、脳動静脈奇形の発生部位によっては重要な脳の働きが阻害され、てんかん発作や認知症状が発生することがあります。
加齢による影響も無視できません。

若いころは血管が正常なので、脳動静脈奇形があっても周囲の血管が脳に血液を送ってくれます。
しかしながら、加齢により動脈硬化が進むとそういったフォローも行き届きにくくなり、血流不足になってしまうのです。
これにより、精神症状、認知機能低下、麻痺、頭痛などを起こします。

脳動静脈奇形の検査

脳動静脈奇形は、脳内出血などの原因を検査しているうちに発覚することが多いため、この症状であるかどうかを調べるために検査が行なわれることが多いようです。
脳内出血を疑われる症状、けいれん発作などで搬送された人に対しては、まず頭部単純CTを撮影します。

これは造影剤を使わない検査で、これが検査の第1段階となります。
次いで、造影剤を注射してから頭部CTを撮影しますが、造影剤によって血管の形がくっきりと見えるようになりますので、脳動静脈奇形があれば詳細に観察することができます。
MRIでは、脳と脳動静脈奇形の位置関係がよりわかりやすく、CTでは確認できない古い時期の出血の痕跡も見つけられます。

また、脳血管撮影により、より詳細な血管や血液の状況を検査できます。
これは太ももの血管からカテーテルを脳動脈の付近まで誘導し、造影剤を送り込む方法です。
これにより、血液の流れを観察することができます。

異常血管がどこにあって、どの血管につながっているのか、血液の出入りはどうなっているのか、動脈瘤はないのかかど、詳細な情報が得られるのです。
てんかん発作がある場合には、脳波検査も行ないます。
こうした検査によるデータを総合し、脳動静脈奇形の状態を調べていきます。

脳動静脈奇形の治療

脳内出血やクモ膜下出血を起こしたら、すぐに入院して安静にし、医師の治療を受けます。
基本的には、症状が安定してから手術となりますが、脳出血の場合は早く治療を受けるほど予後が良くなりますので、怪しいと思ったら救急車を呼ぶなりして病院に急行しましょう。
てんかん発作に対しては、抗てんかん薬で抑えることになります。

脳動静脈奇形は、血管がそのように形成されてしまっているため、薬剤により治すことはできません。
放置すればいずれ脳出血を起こすリスクがあるので、なんらかの治療を行なう必要があります。
治療法については、以下の3つが行なわれています。

開頭手術による摘出

全身麻酔して頭蓋骨を開き、手術顕微鏡で脳動静脈奇形を確認しつつ、異常血管と通常血管のあいだを止血し、異常個所を摘出します。
大元を取り除いてしまうわけですから、脳動静脈奇形の治療法としては最も確実なもので、この手術による全摘が原則となります。
しかしながら、手術そのものは難しいものとなります。
脳動静脈奇形のサイズが大きければ大きほど難しくなりますし、問題となる部位が運動や言語、意識など脳の重要な働きをしている箇所の場合も難易度が高まるからです。
そのため、手術の危険性が高いと判断されるケースの場合、もし症状そのものが軽いならば手術をせずに経過観察となることもあります。

また、手術は1回で済ますのが理想ですが、安全のためにいくつかの段階にわけて行なうこともあります。
脳外科手術ですので、合併症のリスクはあります。
脳内出血、血管閉塞による脳梗塞、手術中の損傷、感染症などです。
けいれんの後遺症が残ることもあり、切開する部位によっては美容上の問題も出てきます。
また、患者が手術に耐えられる体力を残しているかも、考慮する必要があります。

ガンマナイフ

放射線治療のことで、狭い範囲に高い線量の放射線を集中して照射して、正常な脳組織への悪影響を抑えつつ異常個所を小さくしていく治療法です。
外科手術が難しい場所にある、摘出による後遺症が予想されるといった脳動静脈奇形の治療に適しており、頭を開くわけではないので入院期間も2泊2日程度という、患者への負担が軽い治療法となっています。
その代わり、脳動静脈奇形のサイズが3センチ以下でなければ行なえません。

また、治療後すぐに異常個所が消えるわけではなく平均して2~3年の期間がかかります。
治療後の脳動静脈奇形の消失率は2年で68%、3年で86.3%となっていますが、消失するまでの間に脳内出血のリスクは残ってはいるので、注意が必要です。
また、1.4%程度ながら、放射線による脳障害の可能性はあります。

血管内手術による塞栓術

局所麻酔をし、異常血管の入り口までカテーテルを誘導し、異常個所を塞いで小さくしていく方法です。
この方法だけで治療できるケースは少なく、上記2つの治療法の補助として行なわれています。

脳動静脈奇形の疑いがある場合

脳出血などで倒れて病院に搬送されてからではなく、事前に病気がわかっていたほうが治療は受けやすいですし、軽い症状のうちから対処したほうがリスクは軽減します。

脳動静脈奇形そのものは何も起こしませんが、軽い脳出血や血管への血流による圧迫により、頭痛や吐き気、言語障害や運動障害、視野の障害、精神障害などが起こりえます。

そうした症状がある場合は、医師の検査を受けるようにしましょう。
また、てんかん発作があるときには診断のためにも検査が必要ですから、必ず病院に行くようにしましょう。

偏頭痛がある場合

とくに、頭痛は普段から偏頭痛などがある場合、それと混同して見過ごしがちになります。
偏頭痛は発作として起こるものなので、どんな症状が出るか、前兆はどうなのかなどは、各自がそれぞれ把握できるものです。
それと違った頭痛がする場合は、怪しいと疑うべきです。

また、偏頭痛の場合、発作がおさまれば痛みそのものはピタリとやんでしまいますし、それ自体長期間に及ぶものではありません。
しかしながら、脳動静脈奇形による頭痛は出血ですから、どんどん痛みが広がって増していきますし、しびれや物忘れなどの症状が出てきます。
偏頭痛では痛みで集中力がなくなることはあっても、記憶障害は出ませんから、明確な違いになるでしょう。
そうした普段の頭痛とは違う症状が出た場合には、迷わず病院に行くようにしましょう。

とくに、3回以上続く頭痛の場合は偏頭痛の発作でない可能性があります。
健康であっても脳出血で急死するケースが少なくないですから、「いつもの頭痛だったらどうしよう」などとは思わないでください。

早期発見のメリット

早めに脳動静脈奇形を発見した場合のメリットは、なんといっても余裕のあるうちから治療ができるということです。
脳出血を起こしてしまえば一刻を争う状況になってしまいますが、そうでないのであればゆっくりと医師とコミュニケーションを取りながら治療ができます。

また、何かあった場合でも、若いほうが早く回復できますし、リハビリの結果も出やすいですから、圧倒的に予後が良くなります。
後々のリスクなどを考えたら、おかしいと感じたらとりあえず病院でいいでしょう。

ただし、同じような症状を起こす病気はいくつかあることや、専門的な知識や設備がなければ検査できないものであることから、神経内科や脳神経外科医など専門医の診察を受けるようにしてください。

病院によっては、脳出血などに対して早急に治療可能な体制を組んでいるところもありますし、関連施設との連携をとっているところもあります。
そうした病院であれば、治療はもちろん、より正確な検査を受けることもできます。

普段から頭痛外来に行なっているなら、状況を説明し、脳血管の障害の可能性について相談してみると良いでしょう。
元気なうちに脳出血に強い病院が身近にあるかどうか調べておけば、いざというときに役に立ちます。
もちろん調べるだけでなく、実際に足を運んで検査を受けるのもよいでしょう。

空振りを恐れる必要はありませんし、何もなければ非常時に備えて下見をしたくらいに思っておけばよいです。

脳動静脈奇形が引き起こす可能性のある病気

脳動静脈奇形は脳内出血による諸症状を引き起こしますが、ほかにもALS(筋萎縮性側索硬化症)との関連がわかってきました。

ALSとは、筋肉に指令を送る神経が阻害されることで、筋肉が萎縮し動かなくなってしまう病気で、進行が極めて速く発症後3~5年で半数ほどが呼吸筋麻痺により死亡するという重篤なものです。
原因は不明で治療法は現在確立しておらず、日本では南紀地方の風土病として恐れられていました。

アメリカではMLBの国民的人気選手であったルー・ゲーリッグがこの病気で死去したことから知られるようになり、2014年のアイス・バケツ・チャレンジでも注目された病気でもあります。

研究では、脳動静脈奇形が見つかった患者、または脳卒中、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作などを起こした患者が、ALSを発症する頻度を調査しました。
その結果として、脳動静脈奇形がある場合のALS発症率がほかのケースと比べて2.69倍であることがわかりました。

これの研究成果より結論を出すことはできませんが、様々な脳血管障害がALSのリスク因子になっているという推論は成り立ちます。
原因究明に向けて、期待が持てる研究結果といえるでしょう。

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